『ゼルダの伝説 風のタクト』20周年 トゥーンレンダリングで描かれた「ゼルダ」の新たな水平線
『ゼルダの伝説 風のタクト』は、2022年12月13日に発売20周年を迎えた。本作は、それまでのリアル路線だった3Dゼルダのイメージをくつがえし、当時ファンの間で賛否を巻き起こした作品である。今回は、20周年を機に本作の思い出を語っていく。
(本記事の画像は、『ゼルダの伝説 風のタクト』HD版のもの)
”さわれるアニメ”をコンセプトにした、トゥーン調のグラフィック
『ゼルダの伝説 風のタクト』は、2002年12月13日に任天堂から発売された、3Dアクションアドベンチャーゲームだ。「ゼルダの伝説」シリーズとしては、初のゲームキューブ向けタイトルである。
3Dの「ゼルダの伝説」といえば、やはりスマッシュヒットを記録した『時のオカリナ』の印象が強い人も少なくないだろう。『時のオカリナ』は3Dゲーム史の転換点ともいえるタイトルであり、Nintendo 64の性能を最大限に活かしたリアル路線のグラフィックも高い評価を受けた。そんな「ゼルダ」が、新たなプラットフォームでどのような進化を遂げるのか、期待するファンは多かったのだ。
しかし『風のタクト』はそんなファンの予想を大きくくつがえし、デフォルメされたキャラクターデザインと、トゥーンレンダリングによるアニメのようなグラフィックを採用。「さわれるアニメ」をコンセプトに、まったく新しい「ゼルダ」のイメージを構築した。主人公のリンクは猫のような目つきとなり、等身も低く、それまでの作品からはかけ離れたデザインとなっている。
当時こそ、この路線変更を批判するファンは少なくなかった。しかし、近年の『ブレスオブザワイルド』や『スカイウォードソード』もトゥーン調の作品であり、それらも多くのファンに受け入れられていることを踏まえると、『風のタクト』におけるグラフィックの刷新は、シリーズにとって必要なチャレンジだったのではないだろうか。
また、トゥーンだからこそ実現した表現も多い。たとえば本作ではダンジョン攻略のヒントとして、扉を開けるスイッチなどをリンクが目で追っていることがあるが、猫目であるがゆえに、視線がどこを向いているのかがわかりやすいのだ。
また風や煙、炎などのエフェクトもアニメ的な表現で描かれており、リアルなグラフィックでは表現できない温かみがある。トゥーンレンダリングで描かれる世界観は唯一無二のもので、いま見ても色あせないグラフィックだと言えよう。
大海原を駆け巡るロマンと、その弊害
グラフィックの変化がとりざたされがちな本作だが、ゲームシステムに関しては『時のオカリナ』や『ムジュラの仮面』を踏襲している。例としては、「Z注目」と呼ばれるターゲットのロックオン、各地に点在するダンジョンの攻略、謎解きに役立つアイテムの収集などが挙げられる。基本的なゲームシステムはこれまでのゼルダと遜色ないため、おそらくシリーズ経験者であればスムーズに入り込みやすかっただろう。
その一方で、ロケーションについてはほかの作品とは一線を画すものとなっている。本作の舞台となるのは大海原に点在する島々であり、プレイヤーは帆船を使って広大な海を移動するのだが、本作ではなんとロードを挟まずに別の島に移動できる。このように、ゲームキューブのタイトルでありながらオープンワールドのようなフィールドが実現していることも本作の特徴だ。広大な海を自由に移動できる開放的なゲーム体験は、当時の作品としては珍しいものだった。
しかし、海を自由に移動できるシステムが裏目に出てしまっている点も否定できない。そもそも、移動手段となる帆船は風向きによって移動速度が変わる仕様で、進みたい方向から向かい風が吹いているとほとんど前に進むことができない。これを解消するには「風のタクト」というアイテムを使って風向きを変える必要があるのだが、進みたい方向を細かく調整したい場合、そのたびに「風のタクト」を使った一手間が発生する。この移動方法は最初こそ面白いものの、ゲームの進行にしたがって面倒に感じられるようになるのだ。