「ゼルダのあたりまえ」を壊し、オープンワールドのレベルを引き上げた『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』 発売5周年を機に振り返る

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』発売5周年

 『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下、ゼルダBotW)は、2022年3月3日に発売5周年を迎える。本作は、従来の『ゼルダの伝説』の常識を根底から覆しただけでなく、オープンワールドゲームのレベルを一段階引き上げた作品ともいえる。2022年には続編のリリースも予定されている『ゼルダBotW』がどんな革新を成し遂げたのか、あらためて振り返ってみよう。

従来のゼルダから大きく変更されたゲームデザイン

 『ゼルダBotW』は、2017年3月3日に任天堂からリリースされた、Nintendo Switch用アクションRPGだ。人気シリーズである『ゼルダの伝説』の新作だけあって発売前から注目を集めていた。しかし、『ゼルダBotW』が大ヒットした要因は、「ゼルダの当たり前を見直す」というコンセプトにこそあった。

 従来のゼルダには、いわばお決まりのパターンが存在した。具体例を挙げると、巨大なダンジョンを舞台にした複雑な謎解き、少しずつアンロックされていく攻略用アイテムなどがある。「ストーリーに沿って巨大なダンジョンを攻略し、新たなアイテムを手に入れ、また次のダンジョンへ向かう」といった様式美的なゲームデザインこそ、「ゼルダの当たり前」だった。

 しかし、『ゼルダBotW』はそんな様式美から大きく外れた作りになっていたのである。

巨大なダンジョンを廃止し、謎解きがコンパクトに

 『ゼルダBotW』では、ゼルダの最たる特徴だったはずの巨大なダンジョンが廃止された。「神獣」と呼ばれるダンジョンはそこそこ大きいものの、従来作品に比べればかなりコンパクトにまとめられているうえに、必ずしも攻略する必要があるものではない。

 その代わりに、小さなギミックをそこかしこに散りばめることで、『ゼルダ』の根幹ともいえる謎解き要素を担保している。たとえば、各地に点在する「試練の祠」は、そのほとんどが5分もあれば攻略できる、いわばミニダンジョンといえるものだ。試練の祠は120個(DLC含めれば136個)も用意されており、バリエーション豊かな謎解きが楽しめる。

 一方、従来のような大規模なダンジョンがない分、謎解きの難易度は低下した印象だ。しかし、謎解きがコンパクトかつ易しくなったからこそ、『ゼルダBotW』は多くのライトゲーマーに受け入れられたのかもしれない。

さまざまなオブジェクトに影響を与えられる自由度の高さ

  本作では、謎解きに必要なアイテムがすべて序盤に入手できてしまう。しかし、それでも謎解きが一辺倒だとは感じられないのは、本作が導入する物理エンジンと化学エンジンの力によるところが大きい。

 本作の物理エンジンは、「金属片を敵の頭上から落としてダメージを与える」「木を切り倒して水に浮かべる」といった遊びを実現している。一方の化学エンジンは、ゲーム内オブジェクトの状態を変化させるものだ。木や草、岩といった実態のあるものに加え、火や水、風、電気などの状態も変化させる。たとえば、草原に火を付けて上昇気流を発生させる、風で筏を動かす、鉄の箱に電流を流すといったことが可能だ。

 この二種のエンジンの力により、フィールドに点在するさまざまなオブジェクトに影響を与えることができる。したがって、攻略用のアイテムが少なくても、ギミックさえ変われば、謎解きのバリエーションは豊富に感じられるのだ。また、一つの謎解きに対してさまざまな解法が用意されているのも面白い。

 さらに、物理エンジンと化学エンジンの導入により、ゲーム世界への没入感が増しているのも本作の魅力だ。プレイヤーの取った行動に対してさまざまなリアクションがあるだけに、あれこれ試してみようと思える。この手触りこそ、『ゼルダBotW』がプレイヤーに提供する唯一無二の価値ではないだろうか。

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