AIアート×ゲームの可能性。楽しみを生み出すカギは「絵をどう活かすか」

AIアート×ゲームの可能性について考える

 2022年7月に「Midjourney」が話題になって以降、急速に盛り上がりを見せるAIアート。「Midjourney」に続くサービスの増加や、さまざまな絵柄を生成できるようになるなど、短期間で急速な進化を続けており、今現在も注目のコンテンツの一つだと言えるだろう。

 AIアートは英語でテキストを打ち込むだけで、クオリティの高い作品を短時間で生成することができる。それだけに、単に絵を書くだけでなく、漫画等のアートやイラストを用いるさまざまなコンテンツでの利用も模索されている。今回取り上げるゲームの分野でも、AI画像生成を活かしたものが徐々に登場し始めた。

 AIアートがゲームに与える影響として真っ先に挙げられるのが、ゲーム制作におけるキャラクターイラストや背景などをAIに任せることで、ゲーム制作の敷居を下げたり、その工程を簡略化できるいう点だろう。とはいえ、こうしたプロセスの簡略化は、「ゲームの面白さ」そのものには影響を与えない。ぱっと見の印象はよくできても、ゲームの中身がつまらなければ意味がないのだ。そのため、AIアートをゲームデザインの中心において制作するならば「AIアートをどう活かすか」という視座が重要になってくる。

 本稿ではAIアートを用いたゲームの中でも、「AIアートをどう活かすか」という観点で面白いと感じた2作品、『ぼくとAIのなつやすみ』と『AIアートインポスター』を紹介しつつ、AIアートがゲームに与える影響と、その可能性について考察する。

AIアートを使用することに意味をもたせた『ぼくとAIのなつやすみ』

 まず紹介する『ぼくとAIのなつやすみ』はインディーゲーム開発者であるげーむくりえいたーねこ氏が制作したノベルゲームで、「Midjourney」で生成された画像を用いている。

AIアート×ゲームの可能性。楽しみを生み出すカギは「絵をどう活かすか」の画像1
『ぼくとAIのなつやすみ』

 本作は夏休みの宿題をため込んでしまった少年が、AI生成を用いて絵日記を埋めていくという内容で、少年の夏に起こった出来事が絵日記を通して語られる。

 作者のnoteによると「画像生成AIを使っていることが作品内で意味をもち、それが面白さに繋がっている作品」を目指した結果、アイデアが出てきたとのことだ。実際、本作はAIアートをただ使用するだけでなく、少年が絵日記をAI画像生成で埋めたと設定することで、AIが生成する違和感のある画像を自然に取り入れることに成功している。

 また、ストーリー上でもAIで画像を生成したことに意味をもたせており、少年の夏休みに何が起きたかや、宿題が遅れてしまった理由がAIアートを用いた絵日記で語られるだけでなく、プレイヤーがAIに抱くイメージを逆手にとったような表現が盛り込まれている。詳しくは実際にプレイして確認してほしいが、こうした演出はAIアート黎明期だからこそ、多くの人に刺さるのではないだろうか。

 ともあれ、本作はAIアートで生成された絵をどう使い、面白いコンテンツを生み出すかということを、シンプルながらも的確に表現した作品だ。特に選択肢などはなく、10分程度で終了するゲームかつ、無料で遊べるので、気になる方はぜひプレイしてほしい。

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