「上手い人ほどよく煽る」 煽りプレイの心理を専門家に聞いた
煽りプレイをする人は協調性がない?
――心理学的な観点からも煽りプレイをする人の特徴はありますか?
高田:「『この性格が煽りプレイをしやすい』と断言することはできません。これは“ゲーム内の性格と現実世界の性格が一致している”とは言い切れないことが一因にあります。要するに、煽りプレイをしているプレイヤーをゲーム内で捕まえて、性格についての調査を行わなくてはならず、その調査を行うことはなかなか難しいです。
――たしかにゲーム上では性格が変わる人も多いから、明確な心理的特徴はわからないですよね。
高田:ただ、あくまで個人的な見解ですが、煽りプレイ経験者にインタビューしていると、あまり大きなコミュニティに属していないように感じます。日本では、煽りプレイはあまり歓迎されないため、煽りプレイを行うプレイヤーはゲーム内のコミュニティに受け入れられにくい。コミュニティの規模が大きくなるほど、コミュニティを維持するため、一定の規範や規律が必要になります。その結果、煽りプレイのような他者に不快感を与える行為をするプレイヤーは排除されやすいです。以上を言い換えれば、煽りプレイを行う人は“協調性が低い傾向がある”と予想がされます。
――特徴や心理だけでなく、匿名性も煽りプレイに影響しているように感じます。環境的な要因も影響しているのでしょうか?
高田:ゲーム内では、現実世界の性格から乖離した性格を用いてプレイする人が多いです。現実の自分とは違う自分として活動できるゲーム内では、現実ではできないような行為、つまりは煽りプレイがやりやすくなると予想できます。さらに、匿名環境ということも相まって、ゲーム内での行動は現実と比較すると非常に軽率になりやすいです。そもそもインターネットを含むオンラインゲーム内では、現実世界と比べると煽りやすくなると言えます。
煽りプレイを受け流す心構えとは
――煽りプレイにストレスを感じた時、どのように対処すれば良いでしょうか?
高田:先述した通り、オンライン上は匿名性や現実の性格からの乖離など様々な影響があるため、相手を説得することは非常に困難です。煽られた側は、無視をするか、煽られないように強くなるしかありません。また、煽り行為にストレスを感じた際は、一旦ゲームを止めるのも良いでしょう。煽りプレイがゲームの規約に違反する場合、通報することも一つの手です。
――煽りプレイに心を乱されない心構え、みたいなものはありますか?
高田:煽りをするプレイヤーの心情を想像すると良いです。戦略的な煽りに対しては、『この人は自分を怒らせて試合を有利に運ぼうとしているな』とか、情動的な煽りに対しては、『勝っただけでこんなにはしゃいで可愛いな』とか、相手の心情を想像してみると、ある程度メンタルが落ち着くでしょう。他にも、『自分は煽りプレイをせず、自分の腕だけを頼りに相手と対戦してあげている』という事実を認識してプレイすると、煽りプレイによるストレスが軽減されると思います。
――他方、自分自身が煽りプレイをする可能性もあります。煽りプレイをしないために、どのようにゲームに臨むべきですか?
高田:戦略的な煽りをする人は、その戦略を使うことやめましょう。戦略的な煽りをやめると、勝率は下がるかもしれません。しかし、やめるだけでゲーム内のコミュニティにも属しやすくなり、居場所を失わずにすみます。一方、情動的な煽りについては、煽りプレイをしないよう、意識してプレイするしかありません。なにより、ゲーム内での煽りプレイは、ゲーム内での友人も対戦相手も失うリスクを肝に銘じる必要があります。
スマブラは煽りプレイ対策を実施?
――今後、ゲーム会社は煽りプレイとどのように向き合うべきとお考えですか?
高田:私としては、煽りプレイは、特定の状況下ではゲームを盛り上げるために効果的であると認識しています。しかし、ほとんどの場合において、プレイヤー・ゲーム会社どちらにとっても不利益な行為であると考えています。ゲーム会社としては、当たり前ではありますが、許容する場合と、禁止する場合の2つの方策が考えられます。
――具体的にはどのような方策が挙げられますか?
高田:例えば、これまで『大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ』では、“アピール”という対戦上あまり意味がない操作があります。ただ、アピールは主に煽りプレイとして使用されることが少なくなく、かねてより問題視されていました。しかし、シリーズ最新作『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』から、ほとんどの試合でアピールを行うことがシステム的に不可能になった。これはアピールがゲーム会社の意図する使い方がされていないことをゲーム会社側が汲み取ったからでは、と個人的に考えています。
――煽りプレイになり得る操作は見直されつつあるようですね。
高田:はい。実際、eスポーツにおいて挑発・煽りプレイが見られると、日本の観戦者は不快感を覚えるケースが多いように感じます。国内のプロゲーマーが煽り行為をしていると、そのイメージの悪さからスポンサーが付きにくくなるなど、デメリットは少なくありません。今後はプレイヤーやゲーム会社、eスポーツなど、ゲーム業界全体で煽りプレイを見直す流れになるのではないでしょうか。
※矢武陽子. "日本におけるあおり運転の事例調査-先行研究のレビュー結果を踏まえて." IATSS Review (国際交通安全学会誌) 43.3 (2019): 197-204.
メイン画像=Unsplashより