AIから認識されない服って? 「UNLABELED」が提示する監視社会の課題
インターネットの登場以来、時代の変遷とともにデジタル化が進み、いまや社会のあらゆる場面でテクノロジーと接するようになった。
スマートフォンで当たり前のように情報収集することのほか、友人知人と気軽にメッセージアプリでやりとりしたり、現金を持たずにキャッシュレスサービスで決済したりするなど、ここ数十年の間で劇的にライフスタイルの変容が起こっていると言っても過言ではない。
逆を言えば、テクノロジーの世界に囲まれた人類社会にとって、どうテクノロジーとうまく付き合っていくべきなのかも考えなくてはならない。
人間の持つ“手触り感”をないがしろにしてしまえば、進化を続けるテクノロジーによって人間らしさを掌握されかねないだろう。
そんななか、研究・企画・開発が一体となり、テクノロジー起点で社会課題の解決や新たな表現開発に取り組んでいるのが「Dentsu Lab Tokyo」だ。
AIの“目”から身を守るクリエイティブを生む「UNLABELED」
「Dentsu Lab Tokyo」は2015年に始動してから、さまざまなアーティストやクリエイターなどと共創し、まだ世に見ぬクリエーションやソリューションを社会に提案してきた。
2019年にはテクノロジスト集団の「Qosmo」と、会社組織を超えたクリエイティブ人材の集合体「Dentsu Craft Tokyo」と共同で「UNLABELED(アンラベルド)」というテキスタイルレーベルを立ち上げている。
街や駅、空港、ビルなどには多くの監視カメラが設置されていて、AIによる画像解析技術が向上するにつれ、その精度は進化している。
社会の安全や犯罪抑止、効率的な購買活動につながる一方、AIによる監視社会の助長も危惧されている状況だ。
そんなAIの「目」から身を守るというコンセプトのもと、UNLABELEDは2018年からプロトタイプを発表してきた。
4作目となるのが、10月22日〜27日まで渋谷PARCOで開催された新作展示会「Camouflage Against the Machines」でお披露目されたアパレルブランド「NEXUSVII.」とのコラボ作品だ。
“着た人がAI監視カメラから認識されなくなる服”という気鋭なクリエイティビティはどのようなものなのか。
また、UNLABELEDの企画者が今回の展示会で伝えたいことは何なのか。筆者が実際に展示会へ出向き、取材を通して感じたことをまとめたいと思う。
AI監視カメラを掻い潜るアパレルとは......
展示会のエントランスを入ると、目の前には大きなモニターが映し出されていた。
これはAIカメラによる監視モニターで、人を認識すると四角で囲む様子を間近で見ることができる。
実際に筆者がAIカメラの前に立つと、案の定AIによる認識が行われる様がモニターに投影された。
今回UNLABELDがアパレルブランドとコラボした服を着用すれば、本当にAIの目から逃れることはできるのか。
試しにカモフラージュ柄のトートバッグをかざすと、四角が現れず、ありのままの自分が映し出された。
普通に見れば、おしゃれでスタイリッシュなカモフラージュ柄だが、AIの誤認識を誘発する技術を用いた特定の柄を加えることで、AIの監視から逃れることができるのだという。
同様にスウェットを着て試したところ、時折認識されてしまうこともあったが、パーカーに施した柄によって、「AIから人間と特定されない」という体験を味わうことができた。
トートバッグは柄の面積が大きい分、AIカメラに判別されにくくなっているが、パーカーやスウェットの柄はサイズが小さいため、AIに認識されてしまうこともまだあるようだ。