「TikTokで本の売り上げが変わる時代」マンガと小説ではどう違う? 書店員はなに聞く、動画と書店現場の関係

書店員クリエイターに聞く「TikTokで本が売れる時代」

 「TikTok発で本が売れる」という記事が大量に書かれるようになった。

 だが、どんなジャンルが刺さりやすいのか、新曲のプロモーションを兼ねたチャレンジと本紹介とでは反響に違いがあるのか、小説とマンガでは売れ方に違いはあるのか、もっと影響力を拡大させるにあたっての課題はなんなのか――。

 全国展開する書店チェーンの本部に勤務しながらTikTokにコンスタントにマンガ紹介を投稿し、10万以上のフォロワーを有する「書店員はな」氏に、マンガを中心に動画と書店現場との関係を訊いた。

「ジャンルやタイトルの強さ以上に、年齢にかなり左右される」

書店員はな氏
書店員はな氏

 TikTokで本を紹介するクリエイターたちの投稿動画に付くいいね数を眺めると、明らかに傾向がある。

 筆者の印象では「タイトルの強さ」×「紹介のうまさ」×「ユーザーの好み」の掛け算で動画の反響が決まっているように見える。

 「タイトルの強さ」は知名度だ。もともと有名な作品や、『東京リベンジャーズ』など映像化されている作品はさらに強い。小学館の「週刊少年サンデー」がTikTokと組んで2021年に行ったキャンペーンでは、1度めに『よふかしのうた』『古見さんはコミュ症です。』『葬送のフリーレン』の、2度めにあだち充と高橋留美子のハッシュタグチャレンジが行われた。ハッシュタグごとに動画の総再生回数を見ると「#よふかしのなんでも」160万回、「#よふかしのうた」290万回、「#だれだれさんはなになにです」23.4万回、「#古見さんコミュ症です」38.5万回、「#創造のフリーレン」41万回、「#葬送のフリーレン」150万回、「#るーみっく祭り」1500万回、「あだち充夏祭り」1040万回となっている(2021年10月現在)。これ自体は「マンガ紹介動画を投稿してね」と呼びかけたものではなかったことや、作品と作者の知名度の高さ、歴史の長さを併せ持つあだち・高橋のほうが総再生回数が一桁から二桁多かった。

 「紹介のうまさ」が本紹介動画クリエイターの話術・編集術が活きるポイントだ。

 「ユーザーの好み」はTikTok利用者の属性(性別・年齢など)やアプリの利用シーンなどに左右される部分だ。

 つまり、有名な作品で、おもしろい紹介がされても、中高年以上向けのにおいがすると刺さらない――といったことがあるし、もともとの知名度が低くても後者2つにマルが付けばそれなりに伸びる、という感じだ。

 動画制作者として、このあたりの比重は肌感覚としてどうなのだろうか?

「『東京リベンジャーズを読んでいる人にこれがオススメ』みたいな動画は跳ねやすいので、そういう意味では強いタイトルに乗っかることで伸びる傾向はあると思います。ただ、まだ1、2巻しか出ていない作品でも紹介者の腕次第で100万再生いくときもあります。

 ジャンルで言うと少年マンガが強いですね。意外とコアな層が多いのはBLマンガ、女性向け作品。一方で青年誌作品だとコケやすい。僕は麻雀マンガが好きなので『近代麻雀』作品の紹介動画も作ったんですが、残念ながらあまり再生されませんでした(苦笑)」。

 小説だと、ラノベやファンタジー作品の紹介動画はあまり伸びない傾向があるが……。

「マンガでは、なろう系のコミカライズも伸びると20~30万回再生いくときもあれば、1~2万止まりのときもあります。これもやはり腕次第なのかなと。実感としてはTikTokユーザーには若い人が多く、ジャンルやタイトルの強さ以上に、年齢によって刺さる/刺さらないがかなり左右される感じがあります」

「30万回再生≒全国で約1000冊動いている可能性がある」

 動画の再生回数やいいね数と本の売れ行きにはどの程度関係があるのか――誰もが気になるところだが、普通は検証が難しい部分でもある。ただ書店員はな氏は、全国展開する書店チェーンの本部に勤めており、チェーン内全体の売れ行きを確認できる立場にある。つまり、自身の動画がバズった次の日にどのくらい紹介したマンガが売れたのかがわかるため、比較的確度が高い推定が可能だ。

「あくまで僕の動画および勤務先の動向に限った話ではありますが、1万いいねくらいだと影響力は感じられません。ただ再生数が2、30万を超えると露骨に次の日から数字が上がっていきます。2、30万再生いくとチェーン全体で良い時は2、30冊動きます。うちは売上ベースで書店業界全体のシェア3%くらいですから、逆算すると30万再生で全国でコミックスが1000冊程度売れている可能性があります」



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