Ken Ishii×中塚武×宇出津和仁と『パックマン』を起点に考える「ゲーム音楽とクラブミュージックの好相性」

鼎談:『パックマン』とクラブミュージック

「岩谷さんは『パックマン』を“おもてなしの塊”と表現している」(宇出津)

――ゲームやゲーム音楽とクラブミュージックとの相性については、みなさんはどんなふうに感じていますか?

Ken:もともとゲーム音楽とクラブミュージック、特にテクノのような音楽は、同じエレクトロニックなものをルーツにしているし、そもそも音質に共通の魅力があるので、一度体験すれば、どっちも楽しめるような入口を持つものだと思います。クラブで大きな音で聴ける、つまり体で聴けるエレクトロニックな音楽の楽しさは、ある意味では非日常の空間だと思うんですけど、ゲームの魅力も、非日常を体験できるということでもありますよね。

――フライング・ロータスのような人もそうだと思うのですが、最近ではゲームミュージックにも影響を受けてエレクトロニックな音楽をつくりはじめる人も増えています。

Ken:今はもしかしたら、そういう人の方が多いかもしれないですよね。ラジオを聴いている人よりも、ゲームをやっている人の方が、圧倒的に多いかもしれないわけですから。

中塚:僕は大学生ぐらいの頃、Kenさんが出していた音やビジュアルイメージに出会って、すごく影響を受けたんですが、当時その雰囲気は、ゲーム業界にも影響を与えていて。『ワイプアウト』(1995年)はサントラも聴くほど好きだったし、『テクノドライブ』(1998年)もすごく好きで――。その1990年の初頭から1990年の終わりぐらいまでの、ゲームとテクノミュージックの融合に、僕はめちゃくちゃ影響を受けました。あのとき出てきた音楽やカルチャーは、デザイン的にもめちゃくちゃかっこよくて、すごくお洒落でしたよね。

Ken:今回のジャケットを担当しているデザイナーズ・リパブリックのようなデザインですね。

中塚:まさにそうです。あの世界観って、僕は1990年代にKen Ishiiさんたちがつくり上げたものでもあると思っていて。それが僕らにとっての基準になっている感覚もあります。

宇出津:僕ら当時の20代や、もう少し上の30代の先輩たちが、そういうものに影響を受けて、その要素をゲームにどんどん取り入れていった時代ですね。

――今回、そんなKenさんと中塚さん、宇出津さんが繋がったという意味でも、『パックマン』は色々なものを繋いでいるのかもしれませんね。最後になりますが、みなさんが『パックマン』の今後について期待していることも教えてください。

Ken:まずは「永遠に残ってほしいな」「残るだろうな」と思っています。『パックマン』って、40周年経ってもレトロに見えるわけではなく、今の子供たちが見ても好きになれると思いますし、どの国でも知られている、スタンダードのひとつになっているんじゃないかと思います。その音楽も含めて、これからもずっと残っていくものだろうな、と思っています。

中塚:『パックマン』はアメリカで「80年代のミッキーマウス」と呼ばれていた時期もありましたが、スタンダード感がありますよね。それに、僕は会社の垣根を越えて、たとえば任天堂さんのタイトルに参加していたりするのがすごく好きなんですよ。

――『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』などのことですね。

中塚:僕はああいうオールスター感がすごく好きなんですけど、これからも、たとえばパックマンやマリオ、ソニックのような日本を代表するゲームキャラクターたちが、みんなで残っていってくれたらすごくいいな、と思っています。

宇出津:『パックマン』はプレイする人がいかに熱中して、気持ちよくプレイできるかを突き詰めてつくられた作品で、岩谷さんはそれを、「おもてなしの塊です」という言葉で表現されています。ひと昔前まで「エンターテインメントは嗜好品だから、生活必需品ではないよね」と言われていましたが、次第に成熟した文化になって、今はもう、人々にとっての必需品になってきていると思うんです。音楽を聴いたり、テレビを見たり、ゲームをすることで、気分転換できたり、「明日も頑張ろう」と思えたり、優しい気持ちになったりできる。僕にとって『パックマン』は、そこに立ち帰れる象徴のようなものなんです。そこを意識しながらも、新しく生まれてくる子どもにも楽しんでもらえるように、これからもその魅力を伝えていければいいな、と思っているところです。

Ken:『パックマン』って、本質的に人に元気をくれるような魅力を持っていますよね。そういう意味でも、どこのシーンにもポジティブな形で繋がれる存在なのかな、と思います。

■発売・配信情報


『PAC-MAN x DiAN x GCORES Industries トリプルコラボレーショングッズ』
販売期間:2021年7月19日〜
詳細はこちら

『PAC-MAN 40周年メモリアルブルゾン』
販売期間:2021年7月19日〜
詳細はこちら

Yaeji feat. DiAN「PAC-TIVE」
Music Video
配信シングル

DiAN『Electric Dreams -电子白日梦-』
2021年8月4日配信開始

同時配信2ndシングル『Moonbow Disco』
Music Video
配信シングル

「Lucky Rain」
Music Video
配信シングル

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