海を越えても受け入れられる、辻希美『辻ちゃんネル』のすごさ

『辻ちゃんネル』の魅力を再考

 最近、どハマりしているYouTubeチャンネルがあります。それが、元モーニング娘。の辻希美さんによる『辻ちゃんネル』。

 筆者は、ホラー映画が三度の飯より好きなのですが、そこで描かれるスプラッターや怪奇現象と、『辻ちゃんネル』の動画は対極の存在といっても過言ではありません。しかし、驚くほど『辻ちゃんネル』に魅せられ、憧れ、良い影響を受けて日々の生活を改善させていと思うほどになりました。

 では、なぜそこまで魅了されたのか? 今回は『辻ちゃんネル』の魅力を掘り下げたいと思います。

たくましいプリンセス

 動画から伺い知ることができる辻ちゃんの結婚生活は、幸せそのものです。優しく素敵な伴侶と、可愛らしく素直に育った子どもが4人。こだわりが詰まった居心地のよさそうな家に、愛くるしい犬が2匹。まるで、おとぎ話に出てくるプリンセスのようです。

 しかし、それは自らの手で掴み取っているものであり、誰かが運んできてくれる幸せを待っているわけではありません。モーニングルーティンやナイトルーティン、週末ルーティンといった動画を見ると、辻ちゃんはひと息つく暇もないほど動き回り、家事と育児と仕事を全力でこなしているのがわかります。そして、感情の波が一定で、よく笑い、ポジティブな思いを言語化する頻度が高く、自分で自分の機嫌をとることができる人なのだということがわかります(実はとても気分屋だったとしても、それは動画から窺い知ることはできません)。仕事と家事と育児の物量を考えれば、お手伝いさんの2人くらいいてもおかしくないところを、ほとんど自分でこなします。驚くほどのたくましさです。

【ドタバタ】平日のモーニングルーティーン

 そのたくましい様子を見ていると、必然的に観ている側も「頑張らなければ」という気持ちになり、生活へのモチベーションが高まってくるのです。

世のニーズにあっている

『辻ちゃんネル』は、手抜きはしたいけれど、子どものことは疎かにしたくないという世の母親たちのニーズをうまく汲み取っています。

 というのも、辻ちゃんは4人の子どもの母という経験に裏付けられる育児知識の数々を惜しみなく披露しますが、それはいわゆる手間隙をかけた丁寧な“ほっこり系育児”ではなく、「時短」や「手抜き」を売りにするアイテムを活用しつつ一手間加え、子どもの笑顔を勝ち取る実用的ですぐにでも真似したい知識ばかりなのです。

 日本人は元来真面目な気質ゆえに、楽をすることに罪悪感を覚える傾向があり、中でも、食に関しては「食育」という言葉もあるほど子育ての上では重要視されているため、手を抜くことを許されない雰囲気があります。温めるだけの冷凍食品を子どもに与えることは、幼稚園や保育園から使用を控えるように言われるケースもあるため、後ろめたさを感じやすいという話も聞きます。辻ちゃんの紹介する冷食アレンジレシピは、そんな子育て世代の冷凍食品に対する心のハードルを取り払ってくれている気がします。

 冷食に対するハードルを低くする一方で、自家製ソーセージを作ったり、魚を豪快に捌いたりといった、難しそうなレシピにも果敢に挑戦し、それが意外と簡単であることを伝える動画も作っています。これは、加工品に対する新たな気づきをもたらしてくれますし、見ている側のチャレンジ精神も刺激してくれます。簡単なものを積極に取り入れ、レパートリーを増やしてくれる。まさに、今の世の中のニーズにあっていると言えると思います。

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