ニッポン放送に聞く“ラジオ局のPodcastに対する向き合い方” 「最終的にはコンテンツの勝負」

ラジオ局、Podcastとどう対峙?

ーー冒頭でもアメリカの広告市場の増加は話されていましたが、日本とはどのくらいの規模の差があるのでしょうか?

澤田:日本はまだ少し時間がかかると思います。それでも、これだけビッグプラットフォームが日本で動き始めているので、これからの伸び率でいうと、米国に近づくくらいには成長していくんじゃないかと思いますが、はっきりとしたことは言えないですね。

ーーポッドキャストにCMが入れ込まれることで、中には批判的な意見もあるのではないですか?

澤田:ポッドキャストのレビューを見ると、そういった意見も一部はあるんですが、YouTubeに比べると、基本的にポッドキャストのCMはスキップされづらかったりします。中間にCMを入れたりするともうプレイヤー画面を触っていないので、スキップせずにそのまま聴いてくれる利点がある。CMを嫌がられなくする工夫は我々がクリエイティブを頑張るしかないので、今後は実験しながら変わっていくのかなと思います。アメリカだと喋り手がCMでもそのまま喋るのが一番いい広告方法にもなっているし、リスナーからも嫌がられない。日本でもそうなってくるといいんですけどね。

ーー『オールナイトニッポン』シリーズでは、番組終盤のコラボコーナーでEXITや3時のヒロインなど、そこだけのパーソナリテイを呼んでシームレスに広告を打っていますよね。

澤田:おっしゃる通りです。CMをコンテンツ化することでリスナーも楽しいし、嫌がられない。そういった工夫もあると思います。

ーー『poddog』では配信番組を募集してもいますよね。

澤田:ニッポン放送が企画・制作した『JAPAN PODCAST AWARDS』で一般の方たちのポッドキャストもクオリティが高いものがいっぱいあると感じていたので、『poddog』でもそういったコンテンツを流させていただきたいなと思いました。

ーーリリースされてから応募はどのくらいありますか?

澤田:100〜200の応募があって、一部こちらのシステムエラーで出せていない番組もあるんですけど、基本は全て出すようにしています。

ーーポッドキャストオリジナルの番組も展開されていますが、そのプラットフォームに合わせてコンテンツの内容も変えていたりするんでしょうか?

澤田:プラットフォームごとまでは考えていないですが、ラジオとの違いでいうと、ポッドキャストには聴く前に視覚的に見えている情報がある点が挙げられます。タイトルや概要、アイコン画像など、ラジオは基本的にそういった情報を得られていない状態であることを前提に話すので、数分ごとに「この時間は誰々がお送りしています」と言わないといけなかったり。そういう縛りがポッドキャストにはないので、事前情報を利用できるのはポッドキャストとラジオの作り方の違いの一つかなと思いますね。

ーーオリジナルコンテンツの『トータルテンボスのぬきさしならナイト!Season2』は、初のオンラインイベントも決まるほどの人気番組になっています。

澤田:もともとTBC東北放送で13年間やっていた番組で、その時からポッドキャストでも展開されていたんです。それを聴いていた私の上司が僕のところに相談に来て「終わっちゃったからうちで引き取れないか」ということで、TBCと吉本興業に相談してやらせていただくことになりました。もともと聴いていたファンの方がいたので、ポッドキャストだけのコンテンツとして出してもその方たちが変わらずに付いてくれています。あとは、一度終わっちゃったというのもあって、離れていたリスナーが戻ってきてくれていたりもしますね。「聴いていないとこのまま終わっちゃうぞ」と不安になって戻ってきてくれたり、そこはすごくありがたいですね。ダウンロード数も、『オールナイトニッポン0(ZERO)』と比べても全然遜色ありません。

ーー今のラジオとポッドキャストの現在地を澤田さんはどのように見ていますか?

澤田:基本は番組が主体にあって、ラジオもポッドキャストも番組を楽しむ手段の一つだという考えです。それぞれに参加の仕方や盛り上がり方、聴き方の違いはありますが、基本はラジオとかポッドキャストは手段で、番組が第一義にくることが大事だと思っています。

ーー今後、視野に入れていることは?

澤田:ポッドキャストの広告市場の盛り上がりが日本にもやってきて、ニッポン放送もそこの市場を獲得してマネタイズしていくのが一番の目標です。その一つに『poddog』を出してはいるんですけど、当然僕一人の力でやっていても、どうにもならなくて。もっと言うとニッポン放送だけでやっていてもそこは成功しないと思っているので、他局とどんどん協力していきたいというのが僕の考えです。全体で盛り上げていかないと、日本でポッドキャストの成長は実現しないと思います。

ーー他局とも情報共有をしているということでしたが、何か一緒に取り組みをしていく予定などはあるのでしょうか?

澤田:まだ具体的に何かをする話はしていないです。ポッドキャストを使ったシステムについて、うちはこんなのを使ってますよとか、今度こんなコンテンツやるんですよ、という情報共有までですね。個人的には、今後一緒に組んでやっていきたいとは思っています。

ーーAmazonプライム会員を対象とした音声サービス「Music Apartment」が、7月末にスタートするなどライバルも増えていますが、その分広告市場も活性化していくのではないかと思います。

澤田:ポッドキャストはプラットフォームに縛られないので、最終的にはコンテンツの勝負になる。どういった強力なコンテンツを作れるかが一番の肝だと我々としても感じています。

■サービス概要
話題の番組が見つかるポッドキャストアプリ『poddog』
「オールナイトニッポン」や「飯田浩司のOK!Cozy up!」などの
ポッドキャストコンテンツが無料で聴取可能。
ポッドキャストのエピソードにユーザーが自由にタグを付けることができ、
タグをきっかけに新しい番組に出会える。
iPhone、Android端末に対応。
公式サイト

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