人気ポッドキャスターに100億円払う時代ーー音声コンテンツ新時代の未来とは?

ポッドキャストから考える、音声コンテンツ新時代の未来

 海外のエンタテインメント界隈では、オーディオコンテンツが破竹の勢いで成長している。きっかけは、ポッドキャストの急激な成長だ。多くの競合企業がひしめき合うポッドキャスト新時代の中でも、とりわけSpotifyのオーディオ戦略に、業界が注目している。

 多くの人にとって、Spotifyは音楽サブスクリプション最大手のアプリという認識があるはずだ。しかし、ここ数年は、ポッドキャストに熱を注いでいる。日本でもSpotifyのポッドキャスト番組が増えており、明らかな変化が目に見える。

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 Spotifyのポッドキャスト戦略は、2015年まで遡る。ポッドキャスターが番組をサブミッションできるオープンな方法を公開したり、ポッドキャスターの番組製作を支援するなど、徐々に業界で存在感を高めてきた。そして2019年には、本格化にポッドキャスト強化を掲げた戦略を打ち出し、世界最大のポッドキャスト・プラットフォームを目指すようになった。

 日本でもここ数年、ポッドキャストが話題になり、盛り上がりが始まってきた。将来のビジネスモデルを考える時、Spotifyとポッドキャストとの繋がりを無視することはできない。それほど同社のビジネスモデルは、業界に方向性を示している。ここでは、ポッドキャスト業界の最前線を、Spotifyの動向から深堀りしつつ、2020年の新しい潮流を考えてみたい。

 コロナ禍の5月、Spotifyは世界で最も人気あるポッドキャスターのジョー・ローガンと、番組を独占配信する複数年の契約で合意した。ローガンは、歯に衣着せぬトークが売りの番組「ジョー・ローガン・エクスペリエンス」を主催するポッドキャスト配信者だ。彼の番組は毎月1億9000万回以上ダウンロードされるほど、世界中のリスナーにリーチしている。

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 ローガンの影響力は、ポッドキャストビジネスでも頂点に達している。米フォーブスによれば、ローガンが2019年にポッドキャスト配信から得た広告収入は推定3000万ドル(約32億円)と云われている。これは、世界的にトップの数字だ。ローガンは、メディアや大手事務所には所属していないため、かなりの収入を手にしていると思われる。

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 契約では、今年9月からSpotifyは数年に渡って、ローガンのポッドキャスト番組を独占配信するライセンス契約となる。今後ローガンの番組は、Spotifyでしか聴けなくなる。ローガンは、これまで番組をYouTubeでも配信していた(広告収入も得ていた)。ほぼ全ての番組アーカイブも、ローガンと共にSpotifyへ移行する。

 注目はSpotifyがローガンに支払った契約金で、噂では1億ドル(100億円)以上と云われている(Spotifyは公表していない)。スタートアップの買収や、大手メディア作品の配信契約ではない。ポッドキャスター一人の番組に対しての契約金だ。今までは到底考えられなかった桁だ。

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