『カスタムキャスト』1周年記念インタビュー:ユーザー発信で広がる“遊び”とVTuberの可能性

 ドワンゴとS-courtが提携し、KISSが制作・販売する『カスタムオーダーメイド3D2』を元に開発されたスマートフォン向けのVTuber/Vキャスター用配信アプリ「カスタムキャスト」。このサービスは、2018年10月にスタートすると、わずか11日間で100万ダウンロードを突破。細部までカスタマイズ可能なクオリティの高いキャラクターメイキング機能が搭載された配信用サービスとして人気を集めている。2019年10月に1周年を迎え、2年目に突入したカスタムキャストのこれまでや、今後のビジョンについて、株式会社カスタムキャストの代表取締役・川崎大和氏と、株式会社ドワンゴの栗栖到氏に聞いた。(杉山仁)

配信用とキャラメイク用の利用が半々に

――カスタムキャストは2018年10月のサービス開始から1年を迎えていますね。1年間を通して、今の率直な手応えとしてはどんなことを感じていますか?

川崎:カスタムキャストはバーチャルな配信をされる方々のための「配信アプリ」としてスタートさせたものですが、蓋を開けてみると、特に最初期は、機能のひとつだった「キャラクターエディット」の部分がユーザーの方々に受けていったという経緯がありました。ですが、この1年間を通して、本来サポートしたいと考えていた、僕らが「Vキャスター」と呼ぶ配信者の方々の利用も、成熟してきているのを感じます。もちろん、現在もキャラクターエディットは多くの方に楽しんでいただいているのですが、それに加えて僕らが想定していた形での利用も伸びているということについて、熱く感じているところですね。

――1年間を経て、もともと想定していた活用のされ方も広がっているのですね。

川崎:そうなんです。現在では、配信者としてアプリを利用される方と、キャラクターメイキングだけを楽しむ方の割合が、半々ぐらいになっています。もともとはプロというわけではない方たちが、カスタムキャストを介してVキャスターになっていくという部分は、僕らが本来手応えを感じるべきことだったので、ここにきて本来の目的に近づいている感覚です。また、カスタムキャストはアバターのつくり込みの要素が充実しているので、その作業を通して世界観や設定を考えることで、配信をはじめるハードルを乗り越えやすくなっているのかな、とも感じます。最初は「Vキャスターとして活動できますよ」と言われても実感が伴わない方が多かったと思いますが、次第にその部分が成熟してきている感覚です。


――サービス開始当初にキャラクターメイキングの要素で人気が出たことが、図らずもVキャスターとして活動をすることへの敷居を下げてくれた部分があるかもしれない、と。

川崎:それはすごくいいところだったのかな、と思います。開始当初はキャラクターメイキングに魅力を感じてくれた方々が中心でしたが、それは自分の中の理想を形にするひとつの具現化作業でもあり、同時に利用される方々の性癖暴露大会のようでもあって……(笑)。

栗栖:それが簡単にできるという手軽さや、多くの方がSNSを利用するツール=スマホでキャラメイキングができるというサービスの性質が、SNSでの拡散力にも繋がったと感じていました。ですが、それから1年経ってVキャスター配信の部分も、目に見えるような形で盛り上がってくださるようになっています。

川崎:おそらく、カスタムキャストをはじめた当初は、タイミングとしても、ちょっと早かったのかもしれないですね。あの当時というのは、みなさんバーチャルタレントの配信を観てはいたものの、「自分が配信する」という面では、まだ「どうしたらいいんだろう?」と感じる方も多かったと思うので。機能としてスマホで手軽にできるものがあっても、そこに心の壁が存在していたように思います。また、それを乗り越えて「配信しよう」と思っても、今度は「自分の声でやるのか?」「それともボイスチェンジャーを使うのか?」など、色々なことを考える必要がありました。ですが、世間一般にもバーチャルな配信者の方々の文化自体が盛り上がっていく中で、たとえば今では、女の子のアバターを使って男性が自分の声で配信することも、普通になってきていますよね。配信する側だけでなく、受け入れる側にも準備ができたことで、配信の敷居が下がってきているのは大きいのかもしれません。

――バーチャル文化自体の盛り上がりが、カスタムキャストの広がりにも繋がっていると。

川崎:実際、最近ではバーチャルタレントの方々の活躍を色んな場所で見る機会が増えるようになりました。広告にしてもそうですし、他の場面でもそうですが、僕自身も「ここまで色々な場面で活躍するようになってきているんだな」と実感します。企業さんから個人さんまで様々な方が活動していて、メディア露出も多くなってきているので、「みんなが普通に使い出しているんだな」「手軽に使えるようになってきているんだな」と感じています。

――カスタムキャストは、キャラクターメイキングの機能に注目が集まったことで、サービス開始後わずか11日間で100万ダウンロードを突破しました。改めて振り返っていただきたいのですが、開始当初に嬉しかった反響というと、どういうものだったのでしょう?

川崎:当初は、嬉しいというよりも、とにかく驚いたという感覚でしかなかったです(笑)。当時は僕たち自身も自分たちが何者であるかよく分かっていなかったですし、なぜ多くの方が使ってくださっているのかも分かっていなかったので、本当に驚きで。

――あの当時、たとえば自分の周りでも、本来2次元文化に興味がないような人からも、「面白いアプリを見つけた」とカスタムキャストの話を聞くことがよくありました。

川崎:僕の知人からも、同じような話を聞きました。開始当初はそういった広がりを感じる機会がとても多かったです。カスタムキャストは配信者の方々のためにつくったサービスで、当初は一般の方々がキャラメイクを楽しむために用意したものではなかったので、色々な方が利用してくださることに驚いていました。これについては、クリエイター層の方々が、当初からキャラクターメイキングの楽しさを広げてくださっていた部分があったのですが、同時に、そんなふうに自分がつくったキャラクターをアップしてVRインスタのように楽しむことが、多くの人にも魅力として伝わりやすいものだったのかな、と思っています。

栗栖:また、そのようにキャラクターメイキングの機能が盛り上がっていった時点で印象的だったのは、本来私たちが配信者の方に向けて、「自分のアバター(=配信用の私/僕)」をつくるために用意したアプリに、「うちの子/うちの娘」をつくるという、自分ではない魅力を見出してくれたことでした。「そのニーズがこんなにあったんだ」と驚かされました。

――この部分は、カスタムキャストの大きな個性になっていますよね。サービスを利用される方々の中に、「配信を楽しむ方」「キャラメイクを楽しむ方」という形で何通りかのユーザーが生まれていて、「ニーズがひとつではなく複数存在している」と言いますか。

川崎:それは私たちにとっても大きな気づきでした。ですから、当初はVキャスターとしての機能の改善に注力しようと思っていたものの、(作成したキャラクターの写真/動画を自分で観て楽しむための)デコレーションの機能を強化するなど、アップデートの範囲が当初のロードマップにはなかったものにまで広がっていきました。純粋に配信ツールとしてだけ考えていたなら、「デコる」という機能は重視しなくてもよかったと思うんですよ。

――なるほど、複数のニーズについて、それぞれにサービスを充実させていったのですね。早い段階で、女性アバターだけではなく、男性アバターが実装されたのも印象的でした。

川崎:これは、ユーザーのみなさんの分布を調査してみたところ、女性の利用者が多いことが分かったのがきっかけです。その方々からの要望として、「男性キャラクターもつくりたい」という意見がたくさん届いていたんです。これも最初の予定にはなかったものでした。

栗栖:その結果、男性アバターをつくる機能を2019年の1月末にローンチしました。

川崎:リリース時にも非常に大きな反響をいただきました。

――ちなみに、利用者の男女比はどんな割合になっているのでしょう?

栗栖:男女比についても、開始当初からずっと半々ぐらいですね。当初から私たちの予想以上に女性ユーザーの方が多く、それが今でもほとんど変わっていないという状態です。

――カスタムキャストさんの場合、もともとは男性向けの文脈で開発された『カスタムオーダーメイド3D2』のキャラクターメイキング技術がもとになって生まれたサービスだということを考えると、当初から男女比が半々だったというのはすごいことですね。

川崎:そうなんですよ。『カスタムオーダーメイド3D2』を開発をしたときは、もともと女性ユーザーの方々を想定していなかったと言いますか、その目線を持つ必要がなかったんです。ですから、カスタムキャストではコスチュームのデザインを考える際にも、女性スタッフの意見を参考にして、女性ユーザーの方々の目線を取り入れていきました。これは、作成したキャラクターを撮影するフレームや、キャラクターのポージングなどについても同じです。その部分でも、女性のデザイナーに入ってもらったりして進めていきました。

――なるほど。アバターだけではなく、ポージングや撮影用のフレームも、男性ユーザー/女性ユーザーによって、それぞれ求めるものが違ってくるんですね。

川崎:そうなんです。ポージングひとつ取っても、男性に受けるものと女性に受けるものはまた違いますから、そういう部分も1年間を通して変わってきたところだと思います。

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