投手・大谷翔平の成功のカギは、速球の“回転数”にあり? MLB公式分析員&槙原寛己が解説
米メジャーリーグ・エンゼルスの大谷翔平が日本時間5月14日、ツインズ戦に登板。勝ち星こそつかなかったが、7回途中1失点、11奪三振の好投を見せた。そんな投手・大谷について、13日深夜放送のスポーツニュース番組『S☆1』(TBS)が、今後の課題を提起している。
大谷の代名詞といえば、もちろん160キロを超えるストレートだ。しかし、番組の取材に応えたMLB公式分析員のM.ペトリエーロ氏は、「ストレート勝負はベストではない」という。分析によれば、大谷のストレートは「平均156.5キロ」で、メジャー先発投手として3位につけている。一方で、ボールの1分間での回転数を数値化した「スピンレート」を見ると、極めて平凡な数字だというのだ。
番組のまとめによれば、大谷のスピンレートは「2183」で、メジャーで107位。メジャー全体における先発投手の平均は「2263」で、これを下回っている。野球解説者の槙原寛己氏によると、スピンレートはボールの“ノビ”や“キレ”に大きく影響するもので、バッターからすると、回転数の高いボールは目の前で浮き上がるような感覚があり、空振りしやすいという。大谷が今シーズン打たれたホームランを振り返ると、154キロ/2076回転、159キロ/1990回転と、球速は出ていながら、回転数が少ないボールだったことも明らかになっている。
ちなみに2016年、レッドソックスのクローザーとして活躍した上原浩治は、平均球速こそ141キロと平凡だが、スピンレートは約2500という数字だった。なぜこの球速のストレートで空振り三振が奪えるのか、という議論の中でも、「回転数」は大きな説得力を持って語られていた。
160キロ超えのストレートに加え、スライダーやスプリットなど変化球も一級品の大谷に、この高回転が加われば、まさに鬼に金棒だ。槙原氏は、スピンレートを上げるポイントとして、速い球を投げようとすると、どうしても力が入るが、「いかにリラックスして、最後のリリースの瞬間に弾くように投げることができるか。力を抜いて、いかにボールにスピードを伝えることができるか」が重要だと語った。昔で言えば現野球解説者の江川卓、現役では読売ジャイアンツの杉内俊哉投手などが、そういうタイプのピッチャーだという。
ベーブ・ルース以来、100年ぶりとなる「10HR・10勝」へ、ストレートのスピードも求めつつ、この「スピンレート」を意識していくと、さらに勝ち星が伸びていくのではないかと、槙原氏は提案した。