『ちゅらさん』から『ブラッサム』へ 国仲涼子が母親役で受け継ぐ朝ドラの“魂のバトン”

朝ドラを長く観てきた視聴者ならば、「あの“えりぃ”が立派になって……」と感慨深い思いを抱いている人も多いのではないだろうか。連続テレビ小説『ブラッサム』(NHK総合)で、主人公・葉野珠(石橋静河)の母・リョウとして立つ国仲涼子の存在感が、この作品の絶妙なアクセントになっている。
『ほんまもん』(2001年度後期)でヒロイン・木葉を演じ、『ばけばけ』(2025年度後期)でトキ(髙石あかり)の母・フミ役として朝ドラにカムバックした池脇千鶴。現在BSで再放送中の『ひまわり』(1996年度前期)でヒロイン・のぞみを演じ、『なつぞら』(2019年度前期)でなつ(広瀬すず)の母・富士子を演じた松嶋菜々子。「かつてのヒロインが母親役で凱旋」というのは、朝ドラファンには嬉しい「お楽しみ要素」となっている。

国仲の代表作と言っていい『ちゅらさん』は2001年度の前期に放送され、日本中に沖縄ブームを巻き起こした朝ドラだ。沖縄県出身の国仲はヒロインオーディションで2,084人の応募者のなかから主人公・古波蔵恵里(通称:えりぃ)役に選ばれた。オーディションには「琉球舞踊を踊れる人」という条件が設けられていたが、国仲には琉球舞踊の経験がなかった。結局、踊れなくてもいいからと、オーディションを受けることとなり、見事合格。えりぃ役に決まってから改めて琉球舞踊を特訓したという(※1)。
筆者はNHKの番組で、『ちゅらさん』ヒロインオーディションの最終カメラテストに臨む21歳の国仲涼子の映像を見たことがあるが、輝きとオーラが桁違いなのだ。琉球舞踊の条件など取っ払っても彼女にえりぃ役を演じさせたい、そう制作陣が思うのもやむを得ないと感じさせるものがあった。
「えりぃ」の溌剌とした愛くるしさと、古波蔵家の面々が織りなす心温まるエピソード、作品全体を包む沖縄らしい、優しくて「テーゲー」な風合いから、ドラマは大人気となった。本編放送終了後も続編を望む声が高く、夜の放送枠でシーズン2から4までが制作された。
当時まだ演技経験の浅かった国仲は『ちゅらさん』のえりぃ役に決定してから本編撮影のあいだ、困難なことも多かったという。そんな彼女が「えりぃ」として立ち続けられたのは、古波蔵家の父・恵文を演じる堺正章、母・勝子を演じる田中好子、「おばぁ」のハナを演じる平良とみら、“家族”の支えがあってこそだったと、各所で語っている。

特に、母・勝子役の田中好子からは大きな影響を受けたという。『ブラッサム』キャスト発表のコメントで、国仲はこう述べた(※2)。
「この仕事を続ける中で、「40代で朝ドラヒロインの母親役を演じたい」と強く思うようになりました。それは、朝ドラ「ちゅらさん」で母親役を演じられていた田中好子さんの存在がとても大きく、当時、公私にわたって支えていただいたからです。この度、ブラッサムの母親役のお話をいただき、嬉しさで涙がこぼれました」
『ちゅらさん』の名場面として語り継がれるシーンがある。看護師となったえりぃが、11歳のころから一途に思い続けてきた初恋の人・文也(小橋賢児)に自分の気持ちを打ち明けようと決めた日。高鳴る胸を押さえて、実家に電話をする。えりぃは勝子に向かって「お母さん、なんにも聞かないで『がんばれ』って言ってくれる?」と言う。勝子は言われたとおり、ただ、「がんばれ」と娘に言う。えりぃの初恋をずっと見守ってきた勝子には、何も聞かなくてもえりぃがこれから何をしようとしているのか、お見通しなのだ。
「母と娘」の強い絆を描いたこのシーンが、国仲自身も大好きなのだという。十数年前に筆者がインタビューした際、彼女はこう語っていた(※3)。
「娘の一大決心を、言葉少なに応援してくれるお母さんの気持ちが電話越しに伝わって、じーんときます。(中略)家族みんなの愛情に背中を押してもらって、文也くんに告白するところは、私も演じながら胸が震えました」


















