『会社員』がドラマファンを惹きつける理由 吉田羊と南沙良が映し出す“組織のリアル”

ドラマ『会社員』(NHK総合)が面白い。『会社員』は2024年10月期に放送され、多くのドラマ好きを唸らせた傑作ドラマ『3000万』(NHK総合)を生んだ脚本開発チーム「WDRプロジェクト」による第2弾の作品である。「WDRプロジェクト」とは、2022年にNHKが立ち上げた脚本開発チームだ。公募で選ばれたメンバーが、海外ドラマの手法に倣ったチームライティングでオリジナルシリーズドラマの脚本を開発する。

第1弾を手掛けた脚本家の1人である弥重早希子が、その後ドラマ『エラー』(ABCテレビ・テレビ朝日系)を手掛けたのも記憶に新しい。今回は、『3000万』の脚本を手掛けた名嘉友美、松井周に加え、WDRプロジェクト第2期からの参加であるあさか友恵、縦谷宗が名を連ねている。第1弾の成功により、放送前から話題を呼んでいた作品であったが、野木亜紀子『ポリティカルパン』(フジテレビ系)に長田育恵『いろはの恋は時代をかける』(TBS系)、奥寺佐渡子『LOST10』(TBS系)、吉田恵里香『もうパパ!』(ABCテレビ・テレビ朝日系)と、錚々たる脚本家が手掛けるオリジナル作品が勢揃いした10月期のドラマの中でも唯一無二の魅力を放っている。
『会社員』第1話冒頭は、吉田羊演じる主人公・宮木英理子が働く大手企業「KZGC」の会社の窓から始まる。正確に言えば、冒頭の段階ではそれがなんであるかまだ分からない。画面右下の「このドラマではハラスメントの描写があります」という注意喚起と共に示される、薄暗い早朝の外の景色を反映して何かの模様のように見える映像が映し出される。それがビルの一部を映したものであることは、次の場面の、誰よりも早く出社する宮木を見下ろすかのように姿を現した建物の全景が映し出されることでようやく分かるものとして示されるのだ。本作の面白さの一端にこの、会社という「建物」そのものの存在感があるのではないだろうか。例えばエレベーター。

本作は、上にある常務取締役・安西(尾美としのり)のいる役員室と、下にある派遣社員・斉藤るり(南沙良)がいるメールセンターを、エレベーターを介して宮木が行き来する話とも言える。宮木にとって役員フロアは、何十年かけて辿りつきたかった頂点だ。第1話で役員室の安西が宮木に対し「上」を指さし「君の部屋を用意してある」と言うことで「取締役昇進」を匂わせることからも分かるように、そこには、男性組織の中で苦労を重ね「あともう少し」で登り詰めることができるという宮木自身の長年の野望と現状が重ねられる。しかし、常に役員フロアの受付・夏目(夏子)と「アポをとっていないと入ることを許されない」というルールが壁となって、彼女の行く手を阻んでいることから、伏魔殿のようなその場所に入ることの容易でなさも伝わってくる。本来「あとは上に登るだけ」だったはずの宮木の人生は、地下のような暗い場所にあるメールセンターで働く斉藤によって大きく揺り動かされる。正面ゲートを通過していく宮木ら社員たちと違って斉藤のみ入り口が違うのも彼女の会社における立ち位置の違いを明確に示していると言えるだろう。




















