『ちゅらさん』から『ブラッサム』へ 国仲涼子が母親役で受け継ぐ朝ドラの“魂のバトン”

『ブラッサム』国仲涼子が“母”を演じる重み

 2026年秋、『ブラッサム』の珠とリョウを観ていて、ふとした瞬間にこの「えりぃと勝子の絆」の再演を見ているような心持ちになることがある。現在放送中の第3週「化粧と、初恋」では、珠が初めて異性に恋をする姿が描かれている。

 小学校の代用教員となった珠は、同僚の島村(工藤阿須加)から、お化粧や生徒への指導の仕方についてポジティブな言葉をもらって嬉しい。職員室の隣の席で交わす他愛もない会話が楽しい。気づけば島村のことばかり考えて、夕食の最中も家族に島村の話ばかりしている。22回も彼の名前を出したのだと、弟たちにからかわれるほどだ。そんな珠を見守るリョウの面差しが、まさしく「あのときの勝子」のようで、どきりとする。

 娘が恋をしている。けれど「珠さま、島村先生のことが好きなん?」などと野暮なことは聞かない。母はすべてお見通しで、言葉少なにそっと見守るだけ。島村を思いながら鏡に向かい紅を引く珠に「化粧、上手になったね」と言うだけ。風邪をひいて学校を休んだ島村の見舞いに行きたいけれどためらっている珠に「行ってきんさい。ここで心配しちょっても先生の具合はようならん」と、言葉少なにそっと背中を押すだけ。

 もちろん国仲は、リョウを演じる上で、田中好子の演じた勝子を具体的に意識しているわけではないだろう。けれど『ちゅらさん』を観ていた視聴者は、リョウのふとした表情に「あのときの勝子」を見て、目頭が熱くなってしまう。これも長く朝ドラを観続けることの醍醐味ではなかろうか。

 国仲が『ちゅらさん』で演じたえりぃは劇中で息子を授かり、母となるが、当時まだ20代前半だった彼女にとってはまだ未知の世界で、「母や、子どものいる知り合いに、片っ端から」母親になったときの心境を聞いて回ったという(※3)。

 そんな彼女もいまや二児の母。「長男は反抗期の真っ只中」だという(※4)。そうした実体験も、リョウの役作りに大いに影響していると、第1週試写会の際の取材会で彼女は語っていた。

 しかし、「母としての演技のテクニック」とか「朝ドラヒロインの母としてのあり方」とか、そういう小手先の話ではないのかもしれない。朝ドラという枠で連綿と受け継がれてきた「魂のバトン」のようなものが、あるのではなかろうか。それが、田中好子から国仲涼子へと、受け継がれたのだろう。そう思うと、胸が熱くなるのだ。

 第1週の「少女編」では継母と継子という間柄から、珠(少女時代:村上蘭)が不安をおぼえるエピソードがあった。そんな日々を乗り越え、いまやリョウと珠は「最強の母娘」ともいえる信頼関係にある。波乱万丈の人生を歩むことになる珠の、これからの物語のなかできっと、くりかえしリョウは娘の背中を「言葉少なに」「そっと」押すのだろう。

参照
※1. https://www2.nhk.or.jp/archives/articles/?id=D0009122529_00000
※2. https://www.steranet.jp/articles/108625
※3. 『連続テレビ小説読本』(洋泉社)
※4. https://veryweb.jp/navy/interview/1026863/

■放送情報
2026年度後期 連続テレビ小説『ブラッサム』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜から金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:石橋静河、加賀まりこ、松たか子、国仲涼子、渡部篤郎ほか
作:櫻井剛、小松與志子
主題歌:YOASOBI
制作統括:村山峻平、櫻井壮一
プロデューサー:大野陽平
演出:盆子原誠、中泉慧、佐藤玲衣、田中陽児、小林直毅、野田雄介
写真提供=NHK

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