『VIVANT』第2シーズンで“エンタメ特化” AI、内輪ノリ、キャラ変などの賛否を分析

『VIVANT』第2シーズン“の功罪

 2クールにわたって放送されてきたTBS日曜劇場『VIVANT』第2シーズンも、残すところあと1話となった。

 第23話では、主人公・乃木(堺雅人)の正体が、婚約者の薫(二階堂ふみ)についに知られてしまう。さらに、ジャミーン(本間さえ)が核融合技術を持つエリシャ・ママドフ(マナフ・ダダショフ)の娘であることが確定。乃木たちはエリシャに接触するため、情報ブローカーのタイラン(ミルゼ・アガベイリ)と交渉するも取引成立直後、裏切りによってシンシー側に身柄を売り渡されることに。そしてラストでは、情報を追っていた公安の野崎(阿部寛)が、かつての部下であるリュウミンシェン(堺雅人)に銃撃されるという衝撃の展開を迎えた。最終回を目前に、物語は一気に緊迫感を増している。

 第2シーズンは全話で高視聴率を記録しているが、一方で第1シーズンに比べて「演出が雑になった」と感じる視聴者も少なくない。視聴率自体は上がっているのに、なぜそうした“違和感”が生まれるのか。個々の演出を追っていくと、作品が目指す方向性の転換と、そこから生じた功罪が見えてくる。

 まず、第2シーズンの序盤で目立ったのが“内輪ノリ”だ。第11話ではテント元幹部のアリ(山中崇)、第12話では丸菱商事の長野専務(小日向文世)、第13話では公安の野崎と、第1シーズンからの登場人物が次々と物語の裏側に関わっていることが明かされた。過去の人物を再登場させるのはシリーズものの醍醐味で、ファンにとってはうれしい仕掛けでもある。ただ、既知の人物の正体や思惑を反転させることで意外性を生み出す展開が続くと、どうしても“後付け”に映ってしまう。

 野崎の裏切りを思わせる演出も、その一例だ。第15話で潜入捜査だったことが明かされたが、別班員拉致を手引きした行動をどう受け止めたらいいのか。結果的に、捉えられた別班員が凄惨な拷問を受け、それにより和田(平山祐介)が命を落としたことで、“乃木の盟友”という野崎のキャラが崩壊してしまった。

 AIハヤトの登場やハッカーの活躍にもブーイングが聞かれる。ハヤトは複雑な情報分析を一瞬で解決。登場人物が自ら考え、試行錯誤する場面が少なくなり、視聴者は起承転結の「結」だけ見せられる構図になった。これでは作戦の難しさも、成功したときの爽快感も伝わりにくい。

 キャラクターの描き方に一貫性が見られない点も、エンタメ性を優先した弊害と言える。ブルーウォーカーこと太田梨歩は、第1シーズンでは飯沼愛、第2シーズンでは花岡すみれが演じている。前作では山本(迫田孝也)に監禁されたうえ、性加害を受けていたことが明かされた。心に深い傷を負い、自ら命を断とうとしたほどの悲壮感を漂わせていたが、なぜか今作ではそんな過去はなかったかのように明るく仕事をこなし、「恩義」だった黒須(松坂桃李)への感情も、安っぽい恋愛感情にすり替えられていた。

 こうした不満がある一方、方向転換を歓迎する視聴者もいる。アゼルバイジャンでの大規模ロケやシャキ城攻略、別班員の奪還作戦など、ド派手な総力戦は日曜夜に頭を空っぽにして楽しむエンタメ大作ならではの痛快さがある。

 宿敵だったバルカの警察官・チンギス(バルサラハガバ・バトボルド)が颯爽と現れる胸熱な演出や、別班・公安・テントが手を組むオールスター感は、2クールの尺があったからこそできた展開だった。

 では、第1シーズンと第2シーズンの間にある違和感はどこから来るのか。ひとつの手掛かりになるのが、第1シーズンは『スター・ウォーズ』型、第2シーズンは『ミッション:インポッシブル』型であることだ。前作は乃木とベキ(役所広司)の父子関係を軸に血縁や宿命が描かれ、乃木自身の過去や内面にも踏み込みながら、父と息子の対決を描く人間ドラマとしての色合いが濃かった。一方、今作は別班、公安、元テントが手を組み、AIやハッキングを駆使して任務に挑むチーム型のスパイアクションへ移行。ガジェットを駆使して不可能な任務に挑むという作戦の規模や、仲間との連携が見所となった。別班員の救出という当初の目的も、物語が進むうちに「核融合技術の流出阻止」という大きな使命へと広がっていく。

 こうした路線においては、次々と危機を用意し、意外な助っ人や新たな仕掛けで突破する展開が定番。そのぶん、人物の心情や行動の理由を掘り下げる時間が削られ、前作で支持された人間ドラマの手応えが薄くなった。視聴者が「雑」と感じるのは、“エンタメ特化”を支える細部の描写が追いついていないからではないだろうか。

 NHK紅白歌合戦では、堺雅人とノコル役の二宮和也が司会を務めることになった。
『VIVANT』のキャストが年末を代表する番組の顔に選ばれたことからも、本作が幅広い層に浸透したことがうかがえる。そんな話題作がどのような結末を迎えるのか、最後まで見届けたい。

■放送情報
日曜劇場『VIVANT』第2シーズン
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、竜星涼、山中崇、富栄ドラム、林原めぐみ(声の出演)、花岡すみれ、本間さえ、二宮和也、宮下今日子、オーム・タナパック、濱田岳、坂東彌十郎、小日向文世、キムラ緑子、松坂桃李
原作・演出・プロデュース:福澤克雄
プロデューサー:飯田和孝
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/VIVANT_tbs/
公式X(旧Twitter):@TBS_VIVANT
公式Instagram:tbs_vivant
公式TikTok:vivant_tbs 

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマ」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる