金子大地が見せる“グラデーションの芝居” 『ブラッサム』保の多面性が胸を打つ理由

『ブラッサム』(NHK総合)に保(金子大地)が登場したとき、「えっ、好き……」となったのは、わたしだけではないはず。主人公・珠(石橋静河)のいとこにあたる保は、珠の最初の夫・享一(小堀正博)の弟でもある。享一がかなりのクズ男だったので、保も……と思いきや、性格は正反対。
たとえば、珠が「その節は、ご迷惑をおかけしました」と謝罪すると、「迷惑? 迷惑を被ったのは、珠さんあなたじゃろ」とむしろ珠を気遣ってくれる。また、珠と話しているときに「その女は危険人物でえ! いつ包丁で切りつけられるか分からんで!」と口を挟んでくる人物が現れたときも、保はまったく動じない。珠が、「教員をしちょったとき、同僚の男性と恋仲になってしまって。悪い噂が出回ってるんで」と事情を説明すると、「知っとったよ。どうでもいいことじゃ」と何でもないことかのように言ってのける。こちらが求めている返答以上の言葉をくれるのが、保という男なのだ。
しかし、「えっ、好き……」とはなるものの、保にハマりきれない自分もいる。
保は、とにかく優しい。いや、優しすぎるくらいに優しい。優しすぎて、ちょっと怖くなる瞬間がある。だから、珠がほかの男性と仲睦まじそうにしているところを見て、「珠さん、こっちだけ向いちょってくれ。ずっとそばにいたのは、ワシじゃろ?」と言い出したときは、「やっぱりな」と思ってしまった。
保は、爽やかな顔をしてかなり重い。これまで珠に無償の愛を向けていたのに、関係が壊れるかもしれないと思った瞬間に、キッと変わる。その変化を、金子は実に自然に演じていた。包容力がある保と、嫉妬深い保。正反対のはずなのに、決して別人になったわけではない。まるでグラデーションのように、穏やかに変化する。そして、金子の演技は、視聴者にその境界線を感じさせない。
金子の強みである“グラデーションのような芝居”は、映画『サマーフィルムに乗って』(2021年)で、存分に発揮されていた。同作で金子が演じたのは、未来からやってきた謎の青年・凛太郎。時代劇オタクの女子高生・ハダシ(伊藤万理華)が作る青春時代劇の映画に、主役の侍として抜擢されてしまい、最初は「はっ! だから出ないですよ!」と全力拒否するのだが、彼女が織りなす青春に巻き込まれていく。
凛太郎は、分かりやすいようで、掴みどころがない。むしろ喜怒哀楽ははっきりしているほうなのに、なぜかミステリアスな雰囲気が漂っているのだ。ハダシたちに振り回される姿はどちらかというと三枚目っぽい。それなのに、恋愛映画の相手役としての違和感がまるでない。金子の演技は、まるでグラデーションのように自然に移り変わっていくのだ。だからこそ、凛太郎のすべての面が、決して矛盾することなく共存していたのを覚えている。





















