『オデュッセイア』が越えるジャンルの壁 クリストファー・ノーラン流“エンタメ幕の内弁当”

怪獣映画にボディホラーを堪能できたと思っていたら……後半戦で、映画は思わぬジャンルに移行する。“舐めてた相手が殺人マシーンでした映画 ©ギンティ小林さん”だ。これがどういうジャンルか一応説明しておくと、たとえば『96時間』(2008年)、『ジョン・ウィック』(2014年)、『イコライザー』(2014年)である。つまりメチャクチャ強い人が、それを隠しているばかりに、憐れな悪党たちに舐められまくった末に、怒りを爆発させて皆殺しにするやつだ。日本で言えば『水戸黄門』や『暴れん坊将軍』なんかにも近い。
後半から映画は明らかにこのジャンルになり、このジャンルに大切な「カマし」をしっかり見せてくれた(『イコライザー』の「彼は戻らない」のシーン、ああいうのです)。因縁のクジを巡るやり取りや、弓矢を使ったクライマックスなど、上質な「カマし」がビシビシ決まる。ただ、肝心の格闘シーンの完成度は問題があった。『ジョン・ウィック』の“銃+カンフー=ガン・フー”ならぬ、「弓フー」をやっていたが、この点はもっと革新的なことができたと思えてならない(うなるマネーパワーはあるのだから)。とはいえ、「カマし」が気持ちよかったので、そこだけで満足である。それにしても、この「舐められているのに、あえて耐えて耐えてブチ殺す」は『オデュッセイア』の原作通りだと言うから、人間、紀元前700年からあまり変わっていないものである。
本作は壮大な叙事詩であるが、同時に怪獣、ホラー、舐めてた相手が殺人マシーンでした映画と、ノーラン流のエンタメ幕の内弁当でもある。ノーラン、気付けば56歳。しかし、まだまだサービス精神旺盛、“50・60喜んで街道”を爆走中である。
■公開情報
『オデュッセイア』
9月11日(金)全国公開
出演:マット・デイモン、トム・ホランド、アン・ハサウェイ、ロバート・パティンソン、ルピタ・ニョンゴ、ゼンデイヤ、シャーリーズ・セロン
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
製作:エマ・トーマス、クリストファー・ノーラン
配給:ビターズ・エンド、ユニバーサル映画
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