宮﨑あおいは『豊臣兄弟!』の“裏の主役”だった 18年ぶりの大河で刻んだ強さと柔らかさ

波乱の生涯を歩む戦国ヒロインとして知られる市(宮﨑あおい)が、NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』第33回「北庄城の別れ」にて、その生涯を閉じることとなる。本作の主人公は天下人・豊臣秀吉(池松壮亮)の弟・秀長(仲野太賀)であるが、一方で第27回「本能寺の変」までは織田信長(小栗旬)と妹・市の“織田兄妹”として、豊臣と対比させる形で描かれてきた。兄を支える秀長と市。言うなれば裏の主役。そんな『豊臣兄弟!』にとって重要な立ち位置にいた市のこれまでを振り返っていきたい。
『豊臣兄弟!』では、特に序盤では織田家側はほぼ信長と市のみしか登場しない。信長の正室として知られる濃姫(帰蝶)でさえも。それは兄妹のやり取りに、よりフォーカスを当てるためだ。登場したばかりの頃の市は「男に生まれたかった」という思いを滲ませる、強い女性だった。「この婚礼は私の初陣じゃ」と信長のため、織田家のため、市は浅井家と同盟を結ぶその証として、長政(中島歩)の元へと嫁いでいく。

だが、浅井家と懇意の朝倉家が信長と対立。長政も同調したため、義兄の信長に反旗を翻すこととなる。織田と浅井の間で揺れる市。長政の最期を市が返り血を浴びながら介錯するという、斬新なシーンは大きな話題となった。
そこにあったのは、形だけではない、紛れもない夫婦としての愛情。死にゆく夫を楽にするという目的ではあるものの、その手で愛する人の首を刎ねるという、見ていて胸が苦しくなると同時に宮﨑あおいの凛とした佇まいに心震えた名場面であった。
「そなたのような、よき姫に育ててくれ」という長政の願いを受け、市は三姉妹とともに織田家に引き取られる。本能寺の変で信長が討たれ、自暴自棄に陥っているときに、市は秀吉の「この秀吉が上様に変わって、織田家をお守りいたしまする」という言葉によって覚醒。自身の手で織田家を守るため、勝家(山口馬木也)と再婚する道を選ぶ。市のあざとい戯言に勝家が狼狽えたりと、勝家にしか見せない市の柔らかな表情があった。そして小一郎に対しても。

第31回「これで、お別れにございます」にて、北庄城で小一郎と再会し、難しい立場ながら織田家としての誇りと兄を支える覚悟を小一郎に示し訣別するシーンもまた、市=宮﨑の心の機微が見える名シーンだった。
宮﨑にとってNHK大河ドラマへの出演は『元禄繚乱』(1999年)、主演を飾った『篤姫』(2008年)、今回の『豊臣兄弟!』(2026年)で3作目。実に18年ぶりの大河出演であり、小栗旬と並び大河主演経験者として、主演の仲野太賀と池松壮亮を見守る立ち位置にいるのが大きな変化である。『豊臣兄弟!』では森乱役の市川團子をはじめ、若い世代の役者を積極的に起用しているが、今後の物語で重要な役回りとなる茶々を演じる井上和もその一人。
「茶々を演じる井上和さんは21歳で、私も「篤姫」の撮影をしていたときが21歳でした」(※)という宮﨑のコメントにはハッとさせられるのと同時に、織田家として、妹としてだけでなく、母としての思いが強く表れた役でもあったように感じる。

近作では『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系)と似た、宮﨑自身の美しさ、かわいらしさを生かしながらも、新たな市として、宮﨑あおいとしてのイメージを打ち出したのが、『豊臣兄弟!』という作品であった。
参照
※ https://realsound.jp/movie/2026/08/post-2499653.html
■放送情報
大河ドラマ『豊臣兄弟!』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/毎週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:仲野太賀、池松壮亮、吉岡里帆、浜辺美波、白石聖、坂井真紀、宮澤エマ、倉沢杏菜
大東駿介、松下洸平、中島歩、要潤、山口馬木也、宮﨑あおい、小栗旬ほか
語り:安藤サクラ
脚本:八津弘幸
制作統括:松川博敬、堀内裕介
演出:渡邊良雄、渡辺哲也、田中正
音楽:木村秀彬
時代考証:黒田基樹、柴裕之
プロデューサー:高橋優香子、舟橋哲男、吉岡和彦(展開・プロモーション)、国友茜(広報)
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.web.nhk/tv/pl/series-tep-P52L88MYXY
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