『さよならノワール』“名脇役”三河悠冴が登場 北香那と体現する支援者と被害者の距離感

岩田が口を閉ざしていたのは、騙されたことへの恥ずかしさだけが理由ではなかった。朋美に送っていたのは、「結婚してほしい」と思いを伝えるプロポーズ動画。岩田は、「今、何かを話しても、誰にも何も伝わらないことが怖かった」と胸の内を明かす。そんな彼に絵梨子は、「大切なのはこれから先に目を向けることです」と声をかける。その言葉を受けて、岩田は動画と脅迫のメッセージを絵梨子に託し、事件も再び動き始める。

今回ゲストとして出演した三河悠冴といえば、作品の中でひと癖ある人物を演じ、短い登場でも強い印象を残す俳優の一人だ。映画『Cloud クラウド』『Welcome Back』、NHK連続テレビ小説『あんぱん』など出演作が続き、直近のNetflixシリーズ『ガス人間』では、指定暴力団「藤代会」の組員・山崎慎三を演じ話題となったばかりだ。それだけに、今回の岩田役で見せる静かな芝居との振れ幅には驚かされる。事件後はほとんど言葉を発さず、絵梨子からの問いかけにも視線やわずかな表情の変化で応じる岩田。そこから少しずつ言葉を取り戻し、自分の思いを打ち明けていくまでを、三河は大きな感情表現に頼らず丁寧につないでいる。
そんな岩田は次第に絵梨子へ心を許し、「展示会に2人で行きませんか?」と誘うまでになる。しかし、絵梨子があくまで被害者支援員として接していることを伝えると、岩田は再び心を閉ざしてしまう。貴子が懸念していたように、支援する側とされる側の距離の難しさが表れた場面でもあり、絵梨子も初めて自分の支援のあり方に迷うことになった。

「自分はこの仕事に向いていないんじゃないか」。夏海にそう弱音を吐く絵梨子の姿は、最初の頃から考えるとずいぶん変わってきたような気がする。知識には自信があり、自分の判断を疑うことの少なかった彼女が、初めて自分の支援の仕方に迷っている。それだけ岩田と真剣に向き合ってきたということでもあるのだろう。
けれど、夏海が伝えたように、完璧ではないからこそ岩田は絵梨子に話すことができた。事件解決後、岩田と改めて向き合った絵梨子は、「あんなに素敵なプロポーズは岩田さんにしかできません」と声をかける。それは正しい答えを示すのではなく、岩田が誰かを本気で思っていたこと、その気持ちそのものを受け止める言葉。岩田は表情に出すことはなかったが、絵梨子と出会えたことで少しは前を向くことができたはずだ。そして絵梨子も、ようやく自分なりの支援の仕方を見つけ始めたのではないだろうか。

知識はある。でも、まだ経験は足りない。妙なところで自信家で、時に相手との距離も間違える。それでも、相手を理解しようとする時の絵梨子は誰より真っすぐだ。そんな不器用さや危なっかしさも含めて、回を重ねるごとにどこか愛着の湧く人物へと変わってきたのは、北が持ち前の愛嬌と繊細さで絵梨子のさまざまな表情を見せてきたからこそだろう。自分なりの支援の仕方を見つけ始めた絵梨子と夏海の関係性が、これからどう変わっていくのか。2人のバディとしての掛け合いもますます楽しみになってきた。
■放送情報
『さよならノワール』
フジテレビ系にて、週火曜21:00〜21:54放送
出演:小池栄子、北香那、岡山天音、荒川良々、味方良介、濱尾ノリタカ、利重剛、眞島秀和、岡部たかし、浅野和之、戸田恵子、渡部篤郎ほか
脚本:井上由美子
演出:河毛俊作、清矢明子、柳沢凌介
音楽:菊地成孔
主題歌:chilldspot「ドラマ」(RECA Records)
衣装:伊賀大介
心理監修:石橋昭良(臨床心理士/非行臨床研究所)
警察監修:石坂隆昌(ユヌ・ファクトリー)
プロデュース:狩野雄太(スタジオ戦略本部 第1スタジオ ドラマ・映画制作センター)
制作プロデューサー:清家優輝、岸川正史(ファインエンターテイメント)
制作協力:ファインエンターテイメント
制作著作:フジテレビジョン
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/sayonaranoir-cx/
公式X(旧Twitter):https://x.com/sayonaranoir_cx




















