カンザキイオリが明かす“好かれること”の葛藤 『禍禍女』と好意の狂気

カンザキイオリ、『禍禍女』の狂気語る

 ゆりやんさんはもとより海外進出や俳優業など、アグレッシブな方でしたから、今回の映画作品も、初めて観たとき、意外だったけれど、すんなり受け止められました。でもそのときは、こんなにも最高だなんて思わなかった。きっと多分、ゆりやんさんの思い出を、全部昇華できたからこそ、こんなに良い作品になったんだろうな。

『禍禍女』©2026 K2 Pictures

 この作品のすごいところは、人を好きになるという狂気を余すことなく描ききっているところだと思います。簡単なあらすじを言いたいところですが、とりあえず一番最初に言わせていただきますと、初っ端鈴木福くんが死にます。鈴木福くんが。『マルモのおきて』で、あんなにかわいかった福くんが、目玉をえぐられて死にます。スポーン。何に殺された? わかりますよね。禍禍女です。

 好きになられたら終わり。そんな得体の知れない化け物、禍禍女という都市伝説に襲われる、人々の物語です。目玉をえぐって殺すなんてめちゃくちゃ怖いですよね。でもそれだけじゃないんです。この作品の面白さっていうのは。

 この早苗(南沙良)ってぇキャラクターがまじで狂っていて、いいんですよ。この子の好きっていうのはずっと狂っていて、純粋に狂っていて、真っ直ぐなんです。その真っすぐさが、真っすぐすぎて、狂気じみているんです。

 早苗は、前田旺志郎さん演じる宏というキャラクターのことが、大大大好き。どんなことをしちゃうかっていうと、例えば、好きな人の家に勝手に行っちゃうとか。好きな人の食べ物に、自分の毛いれちゃうとか? はい? やばすぎる。でも本当なんですこれが。他にも、宏の彫刻を家の中に大量に作っていたり……、壁にでっかく宏の絵が描かれていて、その口の中に、自分が濡れた状態で体ごと突っ込んでったり……。もう最高すぎます。狂いが。

『禍禍女』©2026 K2 Pictures

 でもね、気持ち悪いな(ごめんねゆりやんさん)って思いながら、でも潔いな、最高だな、カッコいいなって思ったんです。だってこんなグロさ。表現できるのがすごいです。半端じゃないよ。内臓がぐちゃぐちゃの、一番グロい形を具現化したみたいなキャラクターで、それがめちゃくちゃいいんです。好きって、綺麗なだけじゃない。毛やら、体液やら、一番隠したい部分だって、好きを構成する一部で。それをゆりやんさんは誤魔化さずに、しっかり向き合って、絵にしたのが、すごいです。本当にこの映画を観てほしい。声を大にして言いたいんですけど。南沙良さんの、演技。もう、ほんっっっっとうに、すごい。正気と、狂気の、あいだ。あのギリギリの一本の線の上を、行ったり、来たり、行ったり、来たり。全部、顔でやるんですよ。顔が凄すぎるんですよ。

 内臓のグロさ全部を詰め込んだ「好き」の具現化みたいな女、早苗。早苗は宏が大好き。大大大好き。でも、宏は、禍禍女に殺されてしまう。恋した人が殺されたら? この世のルーティン。復讐です。全力で復讐するに決まってますよね。

 そうこいつ、都市伝説的な化け物に、戦いに行っちゃうんです。好きに狂ってる女VS都市伝説の化け物禍禍女あ〜〜〜〜いいよ〜〜〜〜最高。そういうの見たい。

 宏を殺された早苗は、当然、黙っていない。「禍禍女って、そもそも何者なんだよ」って、その正体を、掘り始めるんです。愛が重すぎる女の、執念の犯人捜し。こわい。こわいのに、なんか、応援しちゃう。

 この映画の始まり、ウィキに載っている情報だと、2021年のフジテレビの番組で、ゆりやんさんが、「いつか自分で映画を撮影して、映画監督になりたい」って発言したのを見て、映画プロデューサーの方が、連絡をしたみたいです。脚本家の内藤瑛亮さんが、ゆりやんさんの恋バナを聞いて、「ゆりやんを傷付け苦しめた男たちに映画の中で呪いを込めて報いを与えたい」と言っています。そう思うと、これってゆりやんさんの呪いの映画なんだなと思いました。好きな人の彫刻を作っちゃうような、自分の体の毛を食べ物に入れちゃうような、狂った呪いを、ゆりやんさんは、映画っていう馬鹿でかい器の中にまるっと全部ぶち込んだ。だからこんなに強烈な映画ができたんだなって思いました。

 この映画のキャッチコピーは、「好きになられたら終わり」このキャッチコピーがずっと私の頭を引き摺り回しています。だって私の仕事って、人に好きになってもらうことが、すごく重要じゃないですか。好かれることで、生きているから。冗談じゃない。私は自分の内臓のグロさをとことん知っている。曲で救われたとか、そういうの、やかましい。神様なんて器じゃないのに。ただ私は叫んでいるだけ。なのに、好きになられるたび、崇拝されるたび、勝手に神様にされていく。

 神様にされたら、いつか堕天する日が来るんだから。神様が、神様でい続けられるわけないんだから。見損なわれたら終わり。だから私はずっと、いつかくる堕天を恐れて、静かに怖がりながら、好かれることに向き合わずに生きています。

 でも観終わったら思います。全然終わりじゃない。とにかく最高。カッコいい。早苗っていうキャラクターが。早苗は、好きっていう気持ちを体中で表現して、突き進んで、禍禍女と戦います。その様がめちゃくちゃかっこいい。本当に最高のラストだから、ぜひ観てほしいです。ゆりやんさんの、自分を貫こうとする意思が、ラストに詰まっているような感じもあって、めちゃくちゃいいんです。良いしか言えない。最高しか言えない。

 カッコいいんですよ。好きって。内臓ぐちゃぐちゃだろうがなんだろうが。ドロドロだろうが、正しくなかろうが、正しかろうが。人を好きになることも、人に好きになってもらうことも、何もかもがかっこいい。自分の中の好きに対する恐怖も、少しだけ、変わった気がします。毛はいれないけれど……。

 私も頑張りたいです。人を好きになるということ。自分も音楽を作って、届けることで、人を好きになってもらう仕事で、好きになってもらうことが怖い反面、好きでい続けてもらえるように頑張っている自分がいるけれど。ゆりやんさんを見習いたい。ぜーんぶ全部フォーマットにして、作品に昇華したい。内臓全部。ぶちまけたい。

 だからさ。禍禍女、まじで、観てほしいんです。たぶん、あなたの中の内臓も、ちょっとだけ、成仏するから。絶対見てね。

 はい。以上! ドン!!!! 爆破!!!!!! ちなみにこの映画のスタッフロール流れてるときのBGM、ずっと「ひ~~ろ~~し~~」ってオペラ風に歌ってる謎の歌です。おもろすぎ。

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