『逃げ上手の若君』『ワールド イズ ダンシング』 小西克幸が歴史アニメで魅せる演じ分け

この夏、声優・小西克幸が、2つの歴史アニメで時代を動かす男たちを演じている。『鬼滅の刃』の宇髄天元や『ゴールデンカムイ』の鯉登少尉、『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』のディアボロなど、豪快さと人間味を併せ持つ人物から、底知れない恐ろしさを秘めた悪役まで、数々のキャラクターに強い存在感を与えてきた小西。近年では『薬屋のひとりごと』の高順や、『夜桜さんちの大作戦』の夜桜凶一郎などを演じている。
そんな小西が今夏演じる人物の一人が、『逃げ上手の若君』第2期の足利尊氏だ。武勇、教養、家柄、人望のすべてを兼ね備えた大英雄でありながら、その内側には底知れない怪物が潜んでいる。小西は第1期から、そんな尊氏の二面性を一つの声の中に成立させてきた。
第2期の幕開けとなる第13話では、尊氏の弟である足利直義が本格的に登場。直義率いる関東庇番の異形の面々も階段にずらりと並び、早くも強烈な存在感を放った。一方、逃若党は時行の好物である新鮮な鯛を求めて命懸けの釣りに挑む。シリアスとギャグを大胆に往復する松井作品らしい振れ幅とともに、第2期は幕を開けた。

もっとも、第13話における尊氏本人の出番は決して多くない。それでも、この回の印象を決定づけた人物の一人として、尊氏を挙げる視聴者は少なくないのではないか。本稿で注目したいのは、まさにその権力者としての存在感である。
放送後に話題となったのが、尊氏の内に潜む“怪物”をめぐる護良親王との会話シーンだ。尊氏の「欲しがりの鬼」が発する「全部よこせ、全部」というセリフに重なるように、突如として実写の化け物が画面から手を伸ばす。生々しい異物を侵入させるような大胆な演出によって、尊氏の中に巣食うものが、常人の理解を超えていることを視覚的に突きつけた。
実写によって可視化されたむき出しの怪物性とは対照的に、小西が演じる尊氏は自らの内に潜むものについて、まるで他人事のように淡々と語ってみせる。その穏やかな声と、画面を侵食する化け物との落差が、尊氏の底知れなさをいっそう強く印象づけていた。

小西自身も、第1期放送時のインタビューで、尊氏について「“人のよさ”が逆に怖い」と語っている(※)。最初から悪意や威圧感を前面に押し出すのではなく、欲望に対してどこまでも素直な、子どものような無邪気さを持たせる。その純粋さと怪物性を同じ声の中に共存させてきたことこそ、小西が演じる尊氏の恐ろしさだ。
第13話では、冒頭でこれまでのあらすじを語る講談師が実写で画面に登場したことも話題を呼んだ。役者の演技はもちろん、実写、人形、アニメーションを混在させたチャレンジングな演出からも、今後見えてくるであろう尊氏の新しい一面への期待が高まる。





















