『風、薫る』脇を支える男性キャラが物語を豊かに “直美”上坂樹里が母への本音を吐露

7月21日放送の『風、薫る』(NHK総合)第82話では、直美(上坂樹里)が母への思いを吐露した。

直美は寛太(藤原季節)に調査を依頼。寛太によると、遊女だった初代夕凪は熱海の神社で安産を祈願したのち、交際相手と横浜へ転居。ミルクがゆを作るアメリカ人の女性は、外国人居留区では知られた存在だった。その女性が女郎上がりの妊婦の面倒を見ていたという情報も得られた。文(内田慈)が直美の母であることは確定的となった。
直美は文の看護を続ける。病院にかかるように勧めても文は断ってしまう。脈をとる直美の仕草に感心する文に、直美は自分の腕に手を添えさせて言う。
「これが血液の流れで、心臓の脈打つ動き。脈拍です。(中略)生きている証ですね」
直美はどんな心境だっただろう。同じ血が流れる母と娘である。心の中で「あなたが触れているのはあなたの娘です」と語りかけていたのではないか。あるいは、生きて再会できたこの瞬間を噛みしめるような気持ちだろうか。

前話で、直美は文に自分の母親かどうかを尋ねて否定されている。親の愛を知らずに育った直美にとって、文にどう接するかは難問である。そんな折、早朝に吉江(原田泰造)が直美を訪ねてくる。
原田泰造が演じる牧師の吉江は、直美にとって育ての親とも呼べる存在だ。吉江は寛太から話を聞いていた。「もういいです」と諦める直美に、吉江は「本当にそれでいいんですか?」と繰り返した。その口調は、静かでありながら強い意志が込められていた。沈黙の後、直美は口を開く。
「許したわけじゃない。なんで捨てたの。なんで名前も付けてくれなかったのって、子どもの頃からずっと言いたかった」
吉江に促されて直美は胸にしまった思いを取り出すのだが、上坂樹里の独白は、内心の表出が徐々に高まり、抑えきれずにあふれる感情のほとばしりと心の揺らぎが伝わってきた。直美が涙したとき、それを見つめる吉江の目もうるんでおり、相対する二人の思いの交錯が胸を打つ名シーンとなった。

直美が自身を見つめることができたのは周囲の存在が大きい。りん(見上愛)や環(英茉)と暮らし、家族と呼べる存在ができたことは確実に直美を変えている。吉江には、直美の変化がわかるのだろう。直美に幸せになってほしいと願う吉江は、まさに善意の人である。
今作では、原田泰造や藤原季節、佐野晶哉、小林虎之介たち、主人公を助ける男性キャラクターが持ち味を発揮し、印象的な演技を披露している。教会にパンを食べにくる寛太と吉江のエピソードなんて想像するだけでおもしろい。キャラクターの余白が作品に豊かさをもたらすと実感する。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK





















