伊藤健太郎が恋愛ドラマで重宝される理由 『一緒にごはんをたべるだけ』で問われる共感力

「人生最後の日に、あなたは誰と何を食べたいですか」
7月2日から放送がスタートするドラマ『一緒にごはんをたべるだけ』(テレ東系)の予告は、どこか意味深な「問い」から始まる。
予告映像に映るのは、澤田タキ(早見あかり)の手料理を口にし、「おいしいです」と目を丸くして微笑む斎藤レイ(伊藤健太郎)の姿だ。一見すれば仲睦まじい夫婦のようだが、互いに敬語で話す「絶妙な距離感」が、どこか他人行儀な空気を漂わせる。その違和感の理由は、本作が既婚者同士の「許されない恋」を描いているからだ。

筆者が伊藤健太郎の演技に初めて惹かれたのは、ドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ系)での伊藤真司役。トサカ頭で強面だが、根は真面目なヤンキー。相棒・三橋(賀来賢人)の無茶振りに振り回されながらも淡々と喧嘩をこなし、恋人・京子(橋本環奈)には強烈なツンデレ顔を見せる。
このときから、くるくると変わる瞳や「細かな心の揺れ」を掬い取る表現力に長けていた。
伊藤の演技における魅力は、セリフが多くない役柄でも、わずかな表情の変化だけで心の機微を伝えられることだ。視聴者が自然と感情移入してしまうのは、彼が「小さな感情の揺れ」を大切にしている役者だからだろう。
今春も複数のドラマに出演し、その繊細な演技はどの作品でも際立っていた。『102回目のプロポーズ』(FOD/フジテレビ)で彼が演じたのは、世界的ピアニストであり御曹司でもある音。恋人・光(唐田えりか)がチェロを奏でる隣で、優雅な表情を浮かべながらピアノに指を滑らせていく。
スーツを端正に着こなし、きっちりと整えた髪。取材に応じる彼は「生で音を感じてほしい」と落ち着いた口調で語り、その佇まいは紳士そのもの。生まれながらの貴公子のような気品が漂っていた。そして光の前では、一途な眼差しを向ける。穏やかな表情の奥に、彼女への深い愛情が静かに滲んでいた。

音は優しさだけではなく、男気もある人物だ。普段は静かに微笑む彼が、プロポーズの瞬間には一段低い声で「絶対、幸せにする」と誓う。その誠実さは、光の父(武田鉄矢)の突飛な言動にも動じない懐の深さにも表れていた。しかし音はすい臓がんで急逝し、光の未来を別の男性に託すビデオレターを残す。「102回目のプロポーズをしてください」と語るまっすぐな瞳には、死を受け入れながらも愛する人の幸せを願う「ひたむきな愛情」が宿っていた。
もう一つの話題作『100日後に別れる僕と彼』(MBS/TBS)では、理想の同性カップルとして注目される春日佑馬を好演した。本作では、恋人・樹(寛一郎)との生活を追うドキュメンタリー風の構成の中で、インタビューに照れながらも真っ直ぐに愛を語る姿が印象的だったが、実はすでに2人は破局しているという秘密を抱えていた。
物語が進むにつれ、2人の関係が少しずつすれ違っていった過去が明らかになる。言葉でのコミュニケーションを求める佑馬と、想いを胸に秘めがちな樹は、ときにぶつかり合いながらも、何度も互いの気持ちを確かめようとする。伊藤は、揺れる瞳や震える眉といったわずかな表情の変化だけで、佑馬の抱える葛藤を見事に演じ切っていた。





















