『新劇場版☆ケロロ軍曹』をリアタイ世代はどう観たのか パロディと様式美の思い出

リアタイ世代が観た『新劇場版☆ケロロ軍曹』

 この騒動の中でアンゴル=モアが女子高生の制服姿に変身するが、彼女のこのギャル衣装自体、平成ノスタルジーの対象であることも改めて思い知らされる。TVアニメが完結したばかりの『オタクに優しいギャルはいない!?』の伊地知琴子が「典型化した」ギャルデザインであるのに対して、このアンゴル=モアは「リアルタイムのルーズソックス」だ。

 そしてアンゴル=モアのデザインをいま見てみると、「萌え」(死語)の感覚を再び召喚することができる。当時10歳そこらだった私には彼女の魅力を理解できずにいたが、なぜかDVD全巻セットを揃えていた友人だけはアンゴル=モアの良さを小学生にして見抜いていた(脳を焼かれていた)ように思う。

 彼とはよく親の目を盗んでデスクトップパソコンからインターネットにアクセスしては、あまりよろしくないサイトを探索したものだ。「裏ドラゴンボールマニア」や「ウォーリーを探さないで」「忙しい人向けシリーズ」などしょうもないパロディで溢れかえっていた当時のカスみたいなインターネット空間には、今ほどの広告価値はない。代わりに、なぞのばしょ≒フロンティアとしての理想を仮構するだけの期待が、わずかにあった。しかしほとんどがSNS機能と同化した今のインターネットに、カオスを引き換えにして得られるこのような自由はない。ペコポンは滅びるべきである。

 といいつつ、侵攻対象であるはずの異人たちのジャンクな文化になぜか愛着を抱いてしまい、ズルズルと先延ばししてしまう日常に『ケロロ軍曹』の良さがあるのだとすれば、大人になった今のほうがその価値を理解できるかもしれない。「仕事」の重要な決断を先延ばしして無為な日々を繰り返しているうちに、いつのまにかそれが自己目的化する。このテーマだけは今作にも見出すことができる。

 敵キャラとして登場するアルルとデルルの思惑、そしてやはり着地するケロロと冬樹の友情に、それはある。そしてケロロと冬樹の友情が、一つの形としてはこれで最後なのだと思うと、思いの外寂しくなった。少なくとも、あの声で二人のやりとりを聞くことはもうない。ある場面で冬樹は「ただいま」と告げるが、それは帰郷を意味すると同時に別れの言葉でもあった。

■公開情報
『新劇場版☆ケロロ軍曹 復活して速攻地球滅亡の危機であります!』
全国公開中
出演:渡辺久美子、小桜エツコ、中田譲治、子安武人、草尾毅、桑島法子、斎藤千和、平松晶子、池澤春菜、石田彰、広橋涼、能登麻美子、長谷川忍(シソンヌ)、ジェシー(SixTONES)
ゲスト声優:山田孝之、木南晴夏、ムロツヨシ、佐藤二朗、宅麻伸、鈴木亮平、小栗旬、菅田将暉、橋本環奈、中村勘九郎、柳楽優弥、吉沢亮
原作:吉崎観音『ケロロ軍曹』(KADOKAWA刊)
脚本・総監督:福田雄一
監督:追崎史敏
キャラクターデザイン・総作画監督:小池智史
音楽:瀬川英史
主題歌:ano「貸しっぱなしデスティニー」
オープニング曲:ano & 粗品「また帰ってきたケロッ!とマーチ」
制作:BN Pictures
配給:KADOKAWA、バンダイナムコフィルムワークス
©吉崎観音/KADOKAWA・劇場版ケロロ軍曹製作委員会
公式サイト:https://www.bn-pictures.co.jp/keroro-anime/movie/
公式X:@keroro_anime

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