『田鎖ブラザーズ』岡田将生の涙に違和感? 渡辺真起子の持つ“怪物性”から真意を考察

兄弟が、かつて両親が殺害された事件の真相を追う金曜ドラマ『田鎖ブラザーズ』(TBS系)。これまで本心を隠し、兄として事件を追い続けてきた真(岡田将生)が、「本当は父ちゃんみたいに作る仕事がしたかった」と涙を流すシーンは、第6話最大のハイライトとなった。その絞り出すような本音が視聴者の涙を誘うと同時に、画面を異様な緊張感で支配したのが、渡辺真起子演じる福祉健康課の職員・秦野小夜子の存在である。
秦野に対する強烈な違和感と不穏さは、第5話のラストから周到に伏線が張られていた。大学理事長を毒殺した、受験生の母・成田温子(中島ひろ子)は、秘匿性の高いアプリで「先生、これで本当に良かったのでしょうか」とメッセージを送っていた。その後、画面には手を「とんとん」と叩く独特の仕草が映し出される。

そして第6話、「先生」と呼ばれる人物が登場する。秦野小夜子だ。復讐のため、殺人を犯した疑いをかけられている宇野孝道(山本浩司)が相談していた相手が彼女だった。宇野に「これでおあいこ」と言いながら手を「とんとん」と叩く仕草や、成田の母が人目を忍んで彼女を訪ねる様子は、あたかも秦野が2人に殺人教唆をした張本人であるかのように、視聴者へ強く印象づけていく。
何より、秦野の声色、そして一切の迷いを感じさせない佇まいは、見ているこちら側にまで、「秦野の言うことこそが正義なのではないか」と思わせるほどの異様な説得力に満ちている。宇野や成田が彼女の言葉にのまれ、その支配下に置かれてしまったとしても、十分に納得がいくだろう。
真が初めて秦野と会話した際、最初は彼女を値踏みするような様子で話を聞いていたが、明確に顔色を変えた瞬間がある。それは、秦野が「心を隠しているといつか自分を偽るようになる。たとえば、身内にさえも」と言い放ったときだ。真は、弟・稔(染谷将太)との関係を見透かされた気がしたのではないだろうか。
相手を理解し、受け止めてくれているようでいて、同時に逃げ場を静かに塞いでいく。秦野の恐ろしさは、「救い」と「支配」が隣り合わせに存在している点にある。

この秦野というキャラクターに、生々しい恐ろしさを与えているのが、渡辺真起子だ。1986年よりモデルとして活動を始め、1988年に映画『バカヤロー!私、怒ってます』で俳優デビューした。以来、数々の映画やドラマで存在感を示し続けている。
最近話題になったNetflixシリーズ『九条の大罪』の家守役が記憶に新しい。渡辺が演じたのは、介護施設に父親の遺産を奪われそうになったことで主人公の弁護士・九条間人(柳楽優弥)のもとへ駆け込む依頼人だ。介護に疲れ果て、だからこそ「遺産を取られてたまるか」と意地を見せる女性を泥臭く演じた。面談中、テーブルの上に足を乗せて話す九条に対し、「あんた態度悪いわね」と容赦なく注意し、九条をたじたじにさせた一幕には、思わず笑ってしまった。





















