瀧内公美はなぜ重宝される? 『LOVED ONE』で発揮するシリアスな空気を和らげる芝居の妙

瀧内公美はなぜ重宝される?

 静かな空気にピアノの旋律が鳴り響き、巻き起こるのは不可解な死因がちりばめられた事件。シリアスなトーンで物語が進行していくかと思いきや、時折、ふと空気が緩む瞬間もある。

 アメリカ帰りの天才法医学者・水沢真澄(ディーン・フジオカ)と、出世競争に敗れた崖っぷちのエリート官僚・桐生麻帆(瀧内公美)が難事件に挑むドラマ『LOVED ONE』(フジテレビ系)は、異色の法医学ヒューマンミステリーだ。

 厚生労働省主導で新たに立ち上げられた法医学専門チーム「MEJ(メディカルイグザミナージャパン)」。それぞれの専門分野を受け持つ法医学者たちがチームを組み、死因究明に必要な情報収集のための捜査権を与えられる。本来なら警察組織が担当する聞き込みや現場の捜索、取調べも水沢は率先して行っており、毎回、刑事の堂島(山口紗弥加)をイラつかせているシーンはもはやお馴染みの光景だ。

 個性的なメンバーが揃うMEJの中でも、瀧内公美が演じる桐生はただひとり医学の知識がない。そのため、彼女はセンター長に任じられたにもかかわらず、現場のことは何もわからない状態でスタートする。本人は「できるわけない」と嘆くなか、いきなり法医学者の本田(八木勇征)には「なんで官僚さんがセンター長なんですか。医師免許持ってます?」と尋ねられる始末。本人も「ただいるだけ。ただ見てるだけ。でも責任者」とソファにダイブして自虐的に呟いていたように、トップの立場と自身の役割との乖離に早くも諦めムードが漂っていた。ただ、水沢たちと行動をともにするなかで、徐々にMEJでの仕事に覚悟を決めていく桐生は、緊張した空気を緩和させる存在としてもチームに欠かせないように思う。

 本作は法医学をテーマにしていることもあり、遺体に隠された死因を解き明かす過程で、亡くなった人が秘めていた本心と残された人々の思いが切なく浮かび上がる。すでに悲劇は始まっており、決してハッピーエンドで幕を閉じることはない。作品のトーンもシリアスで静謐な空気が漂うなか、天然で掴みどころのない水沢に振り回される桐生のポップなリアクションは、本作における小休止のような役割を果たしている。

 加えてさりげない気遣いができる桐生は、登場人物たちの衝突や葛藤をクッションのように和らげている姿も印象的。第2話で大学病院の外科医として働く広野(東龍之介)が遺体として発見されたとき、旧友が死んだことにショックを受けていたのは、桐生に呆れていた本田だった。しかし、自身の行動に後悔を抱える本田に対して、彼女は「まだ最後じゃないですよ。法医学者なんだから」と背中を押す温かな言葉を送る。

 ディーンは「公美ちゃんの存在は、現場にとって大きな活力になっています。今回、自分が演じている役はかなり負荷がかかるので、セリフや役作り、音楽なども含めて、常にギリギリのところでやっている感覚があるのですが、彼女がそれを和らげてくれています」とコメントしている(※)。実際、物語上も滝内が演じる桐生は、自分にできることが限られているのを自覚しながらも、メンバーとつぶさにコミュニケーションを取って、彼らの気持ちに寄り添おうとする。ときには感情移入して涙を流す姿も、彼女の人となりを表していた。

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