『名探偵コナン』のアクションはいつからカオスに? 複数ジャンルを内包する劇場版の魅力

『名探偵コナン』のアクションなぜカオスに?

 現在公開中の『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』(以下、『ハイウェイの堕天使』)が好調だ。公開3日間の興行収入は35億円。シリーズ歴代1位の初動を記録している。毎年公開されるシリーズとしては異例のヒットであり、例年ながら『名探偵コナン』という国民的シリーズの強さを感じさせる数字だ。

 そんな『ハイウェイの堕天使』は公開当初からシリーズファンの中でもその内容に賛否が巻き起こっている。シリーズのファンであっても盲目的に肯定するのではなく、その内容をキチンと評価するスタンスが定着していることは、シリーズにとっても喜ばしいことだ。中でも本作のアクションシーンへの比重、そして大味なアクションに対しては様々な意見が乱れ飛んでいる。

 『名探偵コナン』シリーズの土台はミステリーであり、コナンをはじめとした登場人物が謎を解き明かすことが基本構造となる。しかし一方でそもそもの作品の成り立ち、すなわち黒の組織と呼ばれるヴィランに身体を小さくされた高校生探偵が元の身体を取り戻すというストーリーの根幹部分や、阿笠博士の発明品などの現実を超えるような描写の数々は、もはやファンタジーと言っていいだろう。ほとんどすべてのキャラクターにカップリングが存在するという点においては、むしろラブコメである。このように『名探偵コナン』はミステリーという土台の上に様々なジャンルを内包している点にこそ、大きな魅力があるシリーズなのである。

 そして劇場版シリーズではスクリーン映えする大胆なアクションを盛り込むことで、その人気を高め続けてきた。1作目『名探偵コナン 時計仕掛けの摩天楼』ではそれまで原作コミックスやテレビシリーズではあまり描かれてこなかった爆弾パニックをストーリーの軸とした。これは『新幹線大爆破』や『ダイ・ハード』、『ジャガーノート』といった往年の名作映画のオマージュであるだけでなく、ラジコンに搭載された爆弾が少年探偵団を巻き込んで爆発したり、カウントダウンする時限爆弾を自転車に乗せて街を爆走するコナンなど、今とはまた異なる味わいのアクションとなっており、このアクションが『時計仕掛けの摩天楼』の魅力のひとつであり、その後の劇場版シリーズの方向性を決定づけたと言っていいだろう。

 同シリーズの中でもアクションが最大化した作品のひとつが『名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)』(以下、『紺青の拳』)だろう。シンガポールを舞台に、コナン、そして怪盗キッドが活躍する同作では、シンガポールを象徴するスポットであるマリーナベイ・サンズをはじめ、近隣スポットが海賊たちによって爆撃。タンカーが街に突っ込み、マリーナベイ・サンズに至っては海に沈むという衝撃的なアクション描写が盛り込まれた1作だ。特にメインキャラクターのひとりに京極真が登場したことも本作がアクションに振り切った作風となった理由だろう。『コナン』シリーズでも最強格のキャラクターである京極真による戦闘シーンは、『コナン』をそれまでとは一線を画す、いわゆるバトルものにしてしまうほどの描写。本来ミステリーであるはずの『コナン』とは思えない展開に思わず笑ってしまうファンも多かったのではないだろうか。

 ほかにも、『名探偵コナン 緋色の弾丸』における国立競技場風のスタジアムにリニアモーターカーが突っ込む描写や、『名探偵コナン 漆黒の追跡者(チェイサー)』(以下、『漆黒の追跡者』)における黒の組織による東京タワー爆撃といった大胆なディザスターや、前述した『紺青の拳』における京極真の戦闘、『漆黒の追跡者』における毛利蘭の銃撃回避、『名探偵コナン 沈黙の15分(クオーター)』や『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』におけるコナンのスケボーによるシーンに、それを発展させた『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』の超現実的という形容詞以外は考えられないような板に乗ったコナンの滑走描写など、枚挙に暇がないほど劇場版『コナン』シリーズにおいてアクションシーンは大きな魅力のひとつとなっているだけでなく、ディザスター、戦闘、レースシーンとその幅も実に広い。なによりもどのアクションシーンも現実ではありえないような突飛な描写も多く、アニメーションならではのアクションが『コナン』の魅力であるとともに、観客はこうした現実離れしたアクションに対して、心の中でツッコみつつ、笑いながら鑑賞するのが劇場版『コナン』シリーズの楽しみ方のひとつだと言えるのではないだろうか。

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