キアヌ・リーブス主演『アウトカム』なぜ酷評に? ジョナ・ヒルが描く“ハリウッドの虚飾”

『アウトカム』酷評の理由を考察

 「聖人」とも言われるほどに“いい人”エピソードの多い、人気俳優キアヌ・リーブス。彼が演じるハリウッド俳優が、スキャンダルに怯え奔走することになる映画が、Appleスタジオ製作の『アウトカム』である。監督は、『mid90s ミッドナインティーズ』(2018年)をはじめ、映画監督としても存在感を増しているジョナ・ヒル。本作『アウトカム』は、彼が“聖人俳優”を主演に、ハリウッドの虚飾を描く作品なのだ。

 しかし、本作は現時点でかなり酷評されている。注目のキャスト、監督が手がけた映画作品でありながら、なぜそうした評価を受けてしまったのか。ここでは、作品の描こうとしたものを探りながら、厳しい結果になってしまった理由を考えてみたい。

 キアヌが演じているのは、子役時代から人気をほしいままにしてきたハリウッドスター、リーフ・ホーク。彼は、ある日“ある動画”をネタに、正体を隠した謎の人物から脅迫を受けることになる。リーフは、弁護士アイラ(ジョナ・ヒル)が結成した危機管理チームとともに、脅迫への対処を検討するはめになる。

 いったい自分のことを、誰が脅しているのか。疑心暗鬼のなかに放り出されたリーフは、昔からの親友であるカイル(キャメロン・ディアス)とザンダー(マット・ボマー)の力を借りながら、過去に自分が傷つけてきた人々を思い出し、一人ひとり謝罪しようと駆け回る。元マネージャー(マーティン・スコセッシ)、元恋人(ウェルカー・ホワイト)、そして母親(スーザン・ルッチ)など……。しかし事態は好転せず、リーフは自分が思いのほか嫌われていることを認識するだけだった。

 この映画がまず描くのは、ハリウッド俳優のイメージが虚像だという点である。大勢に愛されている国民的俳優であったとしても、実際には、その言動や態度によって周囲から嫌われている者が少なくない。そんな嫌な人物を、聖人レベルの評判を持つキアヌに演じさせている点が、本作の特徴なのだ。

 おそらく、現実のキアヌが人格者であることは疑いようがないだろうが、彼を評するときに、必要以上に“聖人化”して語られる向きがあることも事実だ。人格の特徴を過度に強調することは、それがポジティブなものであれ、一部暴力的な性質を持ってしまうものである。彼が何をしても「さすがキアヌ」と称賛されるといった状況は、彼から失敗する自由を奪い、ささいなことで幻滅されてしまう状況を作っている。これでは健全な扱いとは言えないだろう。

 その意味において、本作でキアヌが自己中心的なスターであるリーフ・ホークを演じることは、彼を神話から弱さを持つ人間へと引き戻す、一種の解放だったといえるかもしれない。キアヌにとって、この人間的な役を演じることは、逆説的メリットがあるということになる。

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