『風、薫る』上坂樹里&藤原季節に漂う“恋”の気配 りんは家族騒動で突然の4人暮らしへ

NHK連続テレビ小説『風、薫る』第14話は、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)の物語が、それぞれ別のかたちで大きく揺れた回だった。第3週「春一番のきざし」というサブタイトル通り、穏やかな変化のように見えながら、その実、2人のこれからを大きく動かしていきそうな気配に満ちていた。

まず、りんのパートで印象的だったのは、東京での生活がようやく落ち着いてきたところへ、また家の問題が入り込んでくることだ。ある夜、美津(水野美紀)と安(早坂美海)が突然りんの家を訪ねてきて、そのまま家族4人での暮らしが始まる。さらに、美津からは亀吉(三浦貴大)がまだりんを探していたこと、そして仕送りも止められたことが告げられる。
美津が謝ったのは、自分が無理やり婚約を進めたことへの後悔があるからだろう。だが、そのひと言でりんの状況が楽になるわけではない。環(宮島るか)との暮らしを支えるだけでも大変な中で、そこに母と妹まで加わることになるからだ。家族がそろうことで生まれるにぎやかさや温かさはある。けれど同時に、りんが背負わなければならないものも増えていく。
そんなりんをさらに慌てさせたのが、美津が瑞穂屋までやって来る場面だ。娘の働く先が気になって様子を見に来るのは、母としては自然なことかもしれない。だが、りんにとっては穏やかではいられない出来事だった。卯三郎(坂東彌十郎)に会わせたくないのも、無理はない。東京でようやく築き始めた自分の暮らしの中に、これまでの家の事情が入り込んでくるという側面もあるだろう。

とはいえ、卯三郎に案内されて事情を聞いた美津は、思いのほかすんなり納得し、首元にはネックレス、手にはチョコレートまで持って機嫌よく帰っていく。娘の仕事を心配して乗り込んできたはずなのに、すっかり新しいものに心をつかまれているあたりが美津らしい。家族の問題を描いていても、そこに人物それぞれのおかしみがあるから、ただ重いだけの場面にはならない。その軽やかさもまた、このドラマの魅力だろう。
一方の直美パートは、りんの家族騒動とはまた違う意味で、観ていてそわそわする。小日向(藤原季節)に鹿鳴館の外で会おうと誘われ、ベンチで待つ直美。そこに吉江(原田泰造)が現れても気づかないふりをして、小日向と合流する流れが印象に残った。これまでの直美なら、もっと身構えていたかもしれない。けれど今回は、自分の気持ちに従って、その場にとどまり、小日向と会うことを選んでいる。だからこそ、その振る舞いからは、直美の中で少しずつ気持ちが動き始めていることが感じられた。

そのうえ小日向は、「髪がお綺麗だから」と通りかかった店でかんざしを贈り、最後には「直美さん、私とお付き合いしてくれませんか?」と告白する。ここまでまっすぐに来られると、観ているこちらとしてはうれしいより先に「こんなに順調で大丈夫なのか」と不安になる。というのも、直美はこれまで、誰かから向けられるまっすぐな好意を、そのまま受け取れるような環境にいたわけではない。だからこそ、小日向の誠実さはうれしいものとして映る一方で、どこか落ち着かないものにも見える。しかも、鹿鳴館という華やかな場所でのやりとりだからこそ、その空気はいつも以上に特別だ。直美が少し別の世界に足を踏み入れたようにも見えるからこそ、この先どうなるのか気になってしまう場面だった。

りんは東京で4人で暮らすことになり、直美は小日向との関係の変化を受け止めることになる。どちらも前に進むための出来事ではあるが、その先がまだはっきり見えているわけではない。だからこそ、第14話は2人の物語が次の局面へ入り始めたことを感じさせる回だった。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK






















