藤原季節が“朝ドラ”に吹き込む新たな風 インディー作品での力量が『風、薫る』でも発揮

どの作品にも同じ俳優がいる。あのドラマにも、この映画にも、同じ俳優が出ている。たしかな実力と知名度を兼ね備えたこの者たちこそ、現在の日本のエンターテインメントシーンを支えている非常に頼もしい存在。そんな俳優のひとりが、藤原季節だ。話題作への出演が相次ぐ彼は、NHK連続テレビ小説『風、薫る』にも登場。若手俳優が作品を牽引する「朝ドラ」において、彼に期待できることは何だろうか。
この『風、薫る』とは、激動の明治時代を舞台に、2人の“トレインドナース(=正規に訓練された看護師)”の活躍を描く作品だ。物語の主人公は、一ノ瀬りん(見上愛)と大家直美(上坂樹里)という生まれも育ちも異なる2人の女性。これから彼女たちは看護師となり、人々との関わりの中で“最強のバディ”になっていく。苦しい展開も朗らかに描く、爽やかな風吹くドラマである。

そんな本作で藤原が演じるのは、アメリカ帰りの海軍中尉・小日向栄介。直美と運命的な出会いをする青年だ。彼が具体的にどのような人物なのかは、今後の展開の中で分かっていくこと。身分を偽ってまで鹿鳴館で働くことになった直美の前に現れるのだから、何かしらの影響を与える重要人物なのは間違いないだろう。心優しき好青年も、危なっかしいアンちゃんも軽快に演じてみせる藤原は、果たしてこのキャラクターをどう立ち上げていくのか。
栄介のような重要人物を藤原が演じることへの期待は、現在の『風、薫る』において非常に大きい。本作はまだはじまって3週目。本来であれば、ヒロインたちは家族のような身近な存在と過ごし、時間をかけて個々のキャラクターを視聴者に提示してもよい気がするところ。だが、りんと直美は自分たちの意志で、それぞれのやり方で、自分の人生を歩みはじめた。これを演じる見上と上坂は、めくるめく展開に立ち向かっていかなければならない。「朝ドラ」という大舞台の主人公に抜擢された演技者ではあるが、やはり視聴者としては頼れる存在がほしいところ。そう、そこに配されたのが藤原季節なのである。

藤原の存在の信頼度は、こと映画界においては固いものがある。メジャーとインディーズのシーンを軽やかに往還し、ジャンルを問わずユニークな作品や役どころに挑み続ける彼の動向を追っていると、“垣根”のようなものはどこにもないように思えてくる。
キャリア初期の代表作の1つである『ケンとカズ』(2016年)もそうだが、近年の彼の代表作に数えられる『東京ランドマーク』(2023年)も『辰巳』(2024年)も、いずれも自主制作映画だ。彼の前にあるのはどれも純粋な「映画」であり、そこには大きいも小さいもない。前のめりで撮影現場に臨む姿だけでなく、完成後の作品を観客の一人ひとりに届けようとする姿勢には、「映画」というものに対する彼の態度や思想が表れている。愛されて当然だ。そんな藤原の豊かな経験は、若き俳優たちが看板を背負う『風、薫る』にも生きるはず。踏んできた場数が違うその背中は、彼女たちの瞳にも頼もしく映るはずである。

さて、現在の藤原は『ちるらん 新撰組鎮魂歌 京都決戦篇』がU-NEXTにて配信中で、この流れの中で『幕末ヒポクラテスたち』と『シンシン アンド ザ マウス/SINSIN AND THE MOUSE』という2本の映画の公開が続く。あのドラマにも、この映画にも、俳優・藤原季節がいる──まさにそんな状況である。彼もまた、現在のエンタメシーンを支える頼もしい存在だ。
正直なところ、どの作品にも同じ俳優が出ている状態を、あまり好ましいとは思っていない。私たちは飽きっぽい生き物だ。いくら器用な演じ分けができる俳優であっても、当然ながら1人の人間。激しい消費サイクルの中で、人気者たちもまた自らを消耗してしまいかねない。たとえ藤原ように頼もしい存在とはいえ、いろいろと託し過ぎるのはどうなのか。そう自戒を込めて、ここに記しておきたい。とはいえ、映画にしろドラマにしろ、彼が登場するたびに高鳴る胸の鼓動は無視できないのである。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK






















