『風、薫る』北村一輝の“良き父”は『スカーレット』と好対照 りんの人生の転機になるか

3月30日に放送開始となったNHK連続テレビ小説『風、薫る』は、「看護」がテーマ。明治時代、「看護」という概念は存在せず、病人や怪我人の看病は基本的に家族が担っていた。そんな中で、専門的な訓練を受けて職業人としての看護婦となり、日本近代看護の礎を築いていく2人の女性を描く。

見上愛扮する主人公の一人・一ノ瀬りんは元武士の娘。父の信右衛門(北村一輝)は明治維新前に家老職を自ら辞し、農家に転身した。かつての家臣たちからは未だ慕われているが、本人は謙虚で役人への誘いも頑なに断っている。元家老としての風格と、どこか影のある雰囲気が印象的で、個人的に最も気になる人物だ。

朝ドラ主人公の父親役は、2019年度後期放送の『スカーレット』に続いて2度目となる北村一輝。『スカーレット』で演じた川原常治は、信右衛門とは異なる父親像で、歴代朝ドラの「ダメ親父」の一人に数えられる。事業で失敗して多額の借金を背負っているにもかかわらず、見栄っ張りだから、すぐ人に酒を振る舞う。自身も酒飲みで、酔っ払っては娘たちと喧嘩になってちゃぶ台をひっくり返す、THE・昭和の頑固親父だ。
しかし、働き者で困った人を放っておけない優しさがあり(それが時に厄介なのだが)、なにより娘たちに対する不器用だけど深い愛情があった。そのため、視聴者からの好感度も右肩上がりで、常治が闘病の末に他界したあとはロスに陥る人が続出するほど。それも北村の好演あってこそで、あの暑苦しくもチャーミングで憎めない感じは天下一品だ。
1990年代から俳優として第一線で活躍し続ける北村の代表作は枚挙にいとまがないが、『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(フジテレビ系)は外せないだろう。北村が演じたのは、吉瀬美智子扮する裕福な人妻と道ならぬ恋に落ちる売れない画家。当時、田舎の小娘だった筆者は今まで感じたことのない、そのむせ返るほどの色気に衝撃を受けたのを覚えている。少し話は逸れるが、『風、薫る』の信右衛門も質素な出立ちながら色気が隠しきれておらず、SNSで「朝から刺激が強い」という声が上がっていたのには思わず笑ってしまった。危険信号が点滅するほどに妖艶な香りを漂わせる北村は、この上なく悪役がハマる。ただ一口に悪役といっても、その演技は決して画一的ではない。
北村といえば、2024年にNetflixシリーズ『地面師たち』で偽の不動産売買を持ちかけ、代金を騙し取る詐欺師集団の一人で情報屋の竹下を演じ、アドリブから生まれた名台詞「ルイ・ヴィトン!」とともに脚光を浴びた。竹下は重度の薬物中毒者で欲深く、最終的には仲間を裏切って豊川悦司演じるボスのハリソン山中に無惨に殺される役どころだ。だが、割と序盤から「あ、この人死ぬな」と予想していた人も多いのではないか。詐欺師に向いているとは思えない短絡的で暴力的な思考・行動原理を持つ竹下。北村ほどのベテラン、かつガタイもいい強面俳優が、あの圧倒的な小物感を出せるのは素晴らしいの一言に尽きる。





















