TVアニメ『呪術廻戦』第3期は稀有なシリーズに 物議を醸したアニオリ演出などから考察

アニオリ演出で、とくに物議を醸したのは、第5話「熱」。虎杖悠仁が呪術高専の先輩・秤金次を仲間に引き込むため賭博場に潜入し、秤と対峙した場面だ。ここでは画面がフィックス(固定)され、長回しの会話シーンが続く。これが原作の演出と大きく異なるため、否定的意見がファンの間で出てきた。興味深いのは、そうした一部の日本のファンに対して、海外のファンダム(ファンの集団)が反発したことだ。
このシーンの演出意図は、カットで割らない長回しによって、潜入捜査の臨場感を高めようとしたのだと考えられる。もちろん、それを採用することで、結果として原作の持っていた演出意図は希薄になるが、少なくともこうした演出としての狙いが、シーンに生きていたのも確かなことだ。その意味で、TVアニメ版を擁護したのが、より実写映画の演出に慣れているだろう海外のファンダムだったことは象徴的な出来事だったといえる。
さて、これも魅力的だった、東京での日車寛見やレジィ・スターなどとのバトルシーンのエピソードを経てたどり着いたのが、最終話「仙台結界」である。ここでは、仙台市泉区七北田、「ユアテックスタジアム」を挟んで、「かむり大橋」から泉中央駅までのゾーンで乙骨憂太が強敵たちと戦うために躍動する。ちなみに、この七北田という地は、源頼朝が奥州藤原氏を滅ぼした「奥州合戦」にまつわる歴史的な場所でもある。
圧巻なのは、このあたりの建物……主に泉中央駅のビルやデッキなど、実際に存在するものが3DCGや写真などを基に詳細に再現されているところだ。筆者は仙台市泉区在住の経験があるので、とくにこの辺りを楽しんで鑑賞することができた。県道22号沿いの「ステーキ宮」の看板すらも確認できて懐かしい。
ご愛嬌なのは、乙骨が烏鷺亨子とのバトル時に、実在する施設・仙台市博物館まで弾き飛ばされるところだ。そうした展開をねじ込んだのは、ここで展示されている掛け軸で登場人物のルーツを語らせるというアニオリ演出のためだ。しかし、実際には泉区・七北田から青葉区の仙台市博物館までは10km近くの距離があり、そんなところまで乙骨が飛ばされ、また元の七北田まで長距離移動するという描写には無理があると言わざるを得ない。これは、映像作品によくある“地理的な嘘”だと考えられる。
ただ、『呪術廻戦』の漫画原作においては、作者の東北地方における土地勘が重要であり、そうしたリアリティが今後、作品に重要な意味を持たせることになる場面が出てくると考えられる。それを思えば、アニオリ演出でわざわざ劇的な見せ方をしたことが、原作が持っていた現実とのリンクを希薄にさせてしまった部分もあるといえよう。
とはいえ、こうしたアニオリ演出があるからこそ、既存の漫画原作をアニメ化する意義があるというのも事実。漫画の構図やリズムそのものが映像作品にそのまま適用できるわけでない以上、アニオリは必要不可欠であり、どこまでオリジナル部分を拡張していくかは、作り手のセンスに委ねられる。
その内容によって喝采を受けたり、非難を浴びたりすることもあるだろう。しかし、それも含めて「作品」なのである。そこでアニオリ自体を否定してしまえば、もはや漫画原作アニメ自体が成り立たないのだ。もちろん、至らない点を批判をするのは、それが建設的なものであればどんどんやればよいが、クリエイターの創造の芽を摘んだり萎縮させようとするのは避けるべきなのではないか。
さて、TVアニメ『呪術廻戦』は、いよいよ「死滅回游」の後編を経て、クライマックスに突入していくはずである。『鬼滅の刃』シリーズの劇場版が未曾有のヒットを記録し、『呪術廻戦』と同じ制作会社「MAPPA」による『劇場版 チェンソーマン レゼ篇』(2025年)が世界的ヒットを遂げ、さらには『呪術廻戦』劇場版総集編も製作されたことを考えれば、シリーズの新作がTVアニメのみで終わらない可能性も考えられる。『呪術廻戦』の物語が、どのような見せ方で幕を下ろしていくのかも含め、その創造性をフルに発揮して第3期同様、また新たな世界を見せてもらいたいものだ。
■配信情報
TVアニメ第3期『呪術廻戦「死滅回游 前編」』
各種プラットフォームにて配信中
キャスト:榎木淳弥、内田雄馬、浪川大輔、緒方恵美
原作:『呪術廻戦』芥見下々(集英社ジャンプコミックス刊)
監督:御所園翔太
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:矢島陽介、丹羽弘美
副監督:高田陽介
美術監督:東潤一
色彩設計:松島英子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:石川大輔(モンスターズエッグ)
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介、ACE
音楽:照井順政
音楽プロデューサー:小林健樹
音響監督:えびなやすのり
音響制作:dugout
制作:MAPPA
オープニングテーマ:King Gnu「AIZO」(Sony Music Labels)
エンディングテーマ:jo0ji「よあけのうた」(Sony Music Labels)
©︎芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト:jujutsukaisen.jp
公式X(旧Twitter)https://x.com/animejujutsu


























