玉木宏の鶴見中尉はなぜ強い? 本人の身体性がにじむ『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』

本シリーズのジャンルを大別すれば「アクション映画」でもあるから、これまでに多くのシーンで殺陣が繰り広げられてきた。今回の『網走監獄襲撃編』では、杉元たちと第七師団が対峙する場面で、凶悪な囚人たちが一気に解き放たれることになっている。たちまち舞台は血の海だ。しかしそのような中でも鶴見中尉は嬉々としている。押し寄せる囚人の群れに対し、彼はいっさい怯むことがない。

これに関して、「そういう設定なのだから」と言ってしまえばそれまでだ。先述しているように、玉木は鶴見中尉の狂気と異常性を演技によって表現してきた。しかしこの監獄という閉鎖的な環境においては、キャラクターの持つ強固な設定よりも、大挙してくる大男たちを前にした、俳優個人の状態のほうが画面に色濃くあらわれるのではないかと思えてならない。けれども微塵もそうなっていないのは、やはり“鶴見中尉=玉木宏”の強さがあるからなのだろう。
玉木といえば、熱心に格闘技に打ち込む人物として知られている。今年の1月にはブラジリアン柔術の国際大会で銅メダルを獲得し、世間をにぎわせたのが記憶に新しい。映画の撮影で行う殺陣はあくまでも演技であるいっぽうで、彼が取り組んでいるのは実戦だ。スポーツとはいえ、そこにはリアルな、ホンモノの闘志がある。これを実感しながら培われる身体というのは、たんに筋トレで鍛えるだけではたどり着けない境地へと至るはず。格闘家や真のアスリートを前にしたことのある方ならば分かっていただけるだろう。あの人々はそれらしい振る舞いをせずとも、ただそこに存在しているだけで強いのだ。
この『網走監獄襲撃編』で玉木個人が殺陣を披露するシーンは多くはない。しかしながらこれが、彼個人の持つ揺るぎない強さを際立たせることになっている。鶴見中尉が指揮を執る立場だから、というだけではない。周囲の者たちが乱闘に身を投じ、闘志が充満する中にあっても、やはり“鶴見中尉=玉木宏”の身体から放たれるもののほうが上回っているからだ。『キングダム』シリーズや『イクサガミ』(Netflix)で玉木が演じるキャラクターもまた、戦闘シーンがなくとも圧倒的な強さを感じる。その理由にも、鶴見中尉との再会によって触れられるはずだ。
主演俳優として、繊細で心優しい青年を好演した純愛映画『ただ、君を愛してる』(2006年)から20年──。特異なキャラクターでさえもサラリと立ち上げてみせる俳優・玉木宏の姿が、いま私たちの目の前にある。
■公開情報
『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』
全国公開中
出演:山﨑賢人、山田杏奈、眞栄田郷敦、工藤阿須加、栁俊太郎、塩野瑛久、稲葉友、矢本悠馬、大谷亮平、高橋メアリージュン、桜井ユキ、勝矢、中川大志、北村一輝、池内博之、木場勝己、井浦新、玉木宏、舘ひろし
原作:野田サトル『ゴールデンカムイ』(集英社ヤングジャンプ コミックス刊)
監督:片桐健滋
脚本:黒岩勉
音楽:やまだ豊
主題歌:10-FEET「壊れて消えるまで」(UNIVERSAL MUSIC / BADASS)
アイヌ語・文化監修:中川裕、秋辺デボ
製作幹事:WOWOW・集英社
制作プロダクション:CREDEUS
配給:東宝
©野田サトル/集英社 ©2026 映画「ゴールデンカムイ」製作委員会
公式サイト:kamuy-movie.com
公式X(旧Twitter):@kamuy_movie
公式Instagram:@kamuy_movie
公式TikTok:@kamuy_movie






















