『超宇宙刑事ギャバン』に求められるものは? 今だからこそ描ける“お約束”からの更新

『超宇宙刑事ギャバン』に求められるものは?

 スーパー戦隊シリーズが50年に及ぶ歴史に幕を下ろし、新たな歴史を受け継ぐ者が現れた。それがテレビ朝日系で放送中の『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』だ。『ギャバンインフィニティ』は、1982年に放送された特撮ヒーロー番組『宇宙刑事ギャバン』の精神を踏襲した作品だという。まずは『宇宙刑事ギャバン』の簡単なおさらいをしておこう。

 1980年代、スーパー戦隊シリーズや仮面ライダーとも異なる、東映の新たな等身大ヒーローとしてスタートした『宇宙刑事ギャバン』。宇宙犯罪組織マクーによる地球征服を阻止すべく、銀河連邦警察に所属するギャバンは地球で一条寺烈と名乗り、マクーが送り込む悪の先兵と戦う。烈が「蒸着!」と叫ぶと、粒子状に分解された特殊スーツが電送され、0.05秒間で装着が完了する。仮面ライダーに於ける「変身」の概念を、特殊強化スーツを瞬時に身体に吹き付ける「蒸着」と言い表したわけだが、全身にシルバーのメッキ加工を施したギャバンのメタリックな出で立ちが好評を博し、翌年以降も『宇宙刑事シャリバン』(1983年)、『宇宙刑事シャイダー』(1984年)と続き、メタリックな強化服をまとった「メタルヒーロー」としてシリーズは大きく発展し続けた。令和に蘇った『ギャバンインフィニティ』は、厳密には『宇宙刑事ギャバン』の完全リメイクではないのだが、宇宙刑事3部作の設定やメタルヒーローシリーズで築き上げたフォーマットが採り入れられている。

 『ギャバンインフィニティ』の主人公・弩城怜慈(どきれいじ)がコンバットスーツを蒸着する際の動き……いわゆる変身ポーズにあたる動作は、『ギャバン』の蒸着ポーズを模したものだ。また、CM前後のアイキャッチも『ギャバン』のそれを意識したメロディーである。もちろん怜慈が所属する組織名が『ギャバン』同様、銀河連邦警察だという点も重要だ。

 このように、かつての宇宙刑事シリーズ、メタルヒーローシリーズの“お約束”を踏襲しつつも、映像自体は平成~令和のスーパー戦隊シリーズで積み重ねてきた最新技術が導入されて、非常にスピーディーになった。デジタル合成に取って代わられるまで、1980年代から1990年代半ばの東映特撮ヒーロー作品には、東通ecgシステムという技術が使われていた。これはビデオ合成した映像をフィルムに変換するキネコ処理と呼ばれる専門的な工程を要するため、どうしても画質が粗くなるのが難点であった。2026年の現在、ビデオ処理とは比べものにならないほど合成技術が発達し、まさに技術が向上した今だからこそ描ける映像が『ギャバンインフィニティ』には横溢している。

 合成技術の向上は爆発シーンにも感じられる。1980年代は火薬を使えるロケ場所が限られていたこともあって、メタルヒーローシリーズも戦隊シリーズも、爆破がある山場の戦いは常に同じ採石場が撮影に使われた。現在は実際の火薬を用いずとも、映像の中に合成の爆発を描くことが出来るので、『ギャバンインフィニティ』第1話序盤で大爆発の中を怜慈が駆け抜けるようなアクションも可能になった。

 こうした最新技術が惜しげもなく投入されている一方で、ギャバンインフィニティがコンバットスーツを装着した後、蒸着プロセスを視聴者に説明するナレーターが挿入されるのはオリジナルの通りで、なんともノスタルジーを感じさせる。主人公が搭乗する大型戦艦が、銃形態の兵器あるいは人型ロボットに変形するギミックなども、メタルヒーローシリーズですっかりお馴染みだ。

 もっとも『宇宙刑事ギャバン』の熱い再現ポイントがあるといっても、この作品を届けるメインターゲットは児童であり、オリジナルの『ギャバン』放送時には生まれていなかった子どもたちが観る番組だ。年季の入った大人のファンがあれこれ言っても、最終的には今の子どもたちが観て楽しめるかどうかが決め手になる。

 スーパー戦隊シリーズ最終作『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』の後番組が『ギャバンインフィニティ』と発表された時に、期待を寄せる声とともに「なーんだ、ギャバンか」という反応も見られた。これは戦隊シリーズに代わる新たなヒーローを製作する取り組みで、結局は80年代にヒットした自社IPに頼ってしまうのか、というガッカリ感から来るものだったのではないかと思う。製作側も、令和の新しいギャバンを作るとなれば、上手く行って当たり前、失敗すれば「それ見たことか」と、どちらに転んでも悪く言われる可能性がある企画にプレッシャーはあっただろう。

 しかし前述の通り、今の子どもたちが新生ギャバンをどう観るか、楽しめるかが重要なところでもあり、オリジナル版とどうしても比べて見てしまう大人のファンは、今しばらく番組の行方を見守ろうじゃないか、と思うのだ。

■放送情報
『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』
テレビ朝日系にて、毎週日曜9:30〜10:00放送
©︎テレビ朝日・東映AG・東映
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/RED/gavaninf/
公式X(旧Twitter):https://x.com/ProjectRED_Toei
公式Instagram:https://www.instagram.com/supersentai_tvasahi/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@superherotime_tvasahi

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