『夫に間違いありません』クリスマスの真実が明らかに 底なしの不幸を演じる安田顕の怪演

『夫に間違いありません』安田顕の怪演

 『夫に間違いありません』(カンテレ・フジテレビ系)第7話では、あの日の真実が明らかになった。

 紗春(桜井ユキ)の前に現れた天童(宮沢氷魚)。亡くなった紗春の夫・幸雄(今里真)の話を切り出そうとした瞬間、紗春が豹変する。紗春は「人殺し」と叫ぶと、天童のICレコーダーを踏みつけた。驚く聖子(松下奈緒)だったが、そのおかげで死んだのが自分の夫でなく、幸雄であることを知られずにすんだ。

 第7話の冒頭は、時系列的にややトリッキーな構成をとった。2024年12月24日、幸雄が失踪したクリスマスイブの夜の出来事が映し出される。バスケットボールの中継を見ながらクリスマスの準備をする紗春は、試合経過に怒りをぶつける。車で夜の道路を走る紗春。駆け込んだ警察署で女性警官に尋ねる。「久留川であがった溺死体が夫かもしれない」。紗春の表情は真剣そのものだ。そこから、天童が紗春に接触した第6話ラストにつながる。

 なぜ紗春は激高したのか? その理由は第7話の後半で明らかになった。真実を追い求める天童は、光聖(中村海人)から一樹(安田顕)が生存していることを聞き出した。一樹と幸雄は、右手の同じ場所に同じようなほくろがあり、そのことから一樹の遺体が幸雄のものである可能性に思いあたる。

 ボールがパスされるように、聖子と紗春、天童の足跡を通じて、視点は紗春に移った。幸雄の同僚社員夫婦との会話で明かされたのは、紗春の性癖。幸雄と仲が良かった紗春は、ひいきのチームが負けると「おおかみ男」のように変身するという。それが意味することは……。

 真実を隠しきれないと悟った聖子は一樹を遠ざけ、連絡を絶とうとする。キャバ嬢殺しの犯人として自身の似顔絵が出回る一樹は、おびえながら暮らしていた。追い詰められた一樹は踏切の前で足を止める。

 2年前のクリスマスの夜の出来事の詳細が語られる。酔いつぶれた一樹が会ったのが幸雄で、幸雄を迎えにきたのが紗春。一樹は「紗春」という言葉を覚えていた。遺体とともに見つかった一樹の財布は、幸雄が預かって帰ったものだった。あの日、たしかに紗春は一樹と会っていたのだ。つまり家にいたという紗春の証言は嘘だったことになる。

 紗春が夫の死に過剰に反応する理由はこれだった。まさか幸雄を川に落としたのが紗春だったなんて。保険金殺人の動機は、紗春が金を得るためだ。ひいきにしている常陸モンキーズの負けが込んで、賭ける資金が底をついた、あるいは借金があったかもしれない。天童は、紗春が幸雄にかけた保険金を増額しようとしていたことをつかんだ。

 紗春が聖子に向けた疑いの目は、自身への意味ありげな視線として返ってきた。攻守交代で、予期していなかった追及を必死で避けていた聖子は、紗春に優越感を抱いたのではないだろうか。もう後ろめたさを感じなくていい。少なくとも紗春に対しては。不敵な笑みを浮かべる松下奈緒の表情の演技は、『スカイキャッスル』(テレビ朝日系)で演じた浅見紗英のようなすごみがあった。

 登場人物の誰ひとりとして幸せになれる予感がしない今作で、安田顕はとりわけ出色の出来だろう。落ちるところまで落ちた人間の生きざまを、尋常ではない熱量で演じきっていて、フィクションの世界だとわかっていても思わず目をそむけたくなる。転落すると加速して、戻ってこれないところまで人間は行ってしまうこと。一歩間違えれば誰にでも起こることとは言え、人生の闇には底がないという事実を突き付けてくる。

『夫に間違いありません』の画像

夫に間違いありません

川で発見された遺体を、「行方不明になっている男性に間違いない」という親族の証言を受けて引き渡したが、後日その男性が帰宅したことで、“遺体の取り違え”が発覚したという衝撃的な事件に着想を得たサスペンスドラマ。

■放送情報
『夫に間違いありません』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:松下奈緒、桜井ユキ、宮沢氷魚、中村海人、松井玲奈、山﨑真斗、吉本実由、白宮みずほ、大朏岳優、二井景彪、磯村アメリ、前川泰之、朝加真由美、余貴美子、安田顕ほか
脚本:おかざきさとこ
演出:国本雅広、安里麻里、保坂昭一
プロデューサー:近藤匡、柴原祐一
音楽:桶狭間ありさ
主題歌:tuki.「コトノハ」(月面着陸計画)
制作協力:ダブ
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/ottonimachigaiarimasen/
公式X(旧Twitter):@ottomachi_ktv
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