『ばけばけ』“異人”問題を現代に投げかける 身近な人の温かさを教えてくれる回に

『ばけばけ』“異人”問題を現代に投げかける

 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第88話は、石を投げられ怪我をしてしまったトキ(髙石あかり)を安心させるように寄り添うヘブン(トミー・バストウ)の姿から始まった。

 第87話では怒りを爆発させていたヘブンだが、トキを見つめる目はなんだか切なく、トキも何かを思い、寝付けないよう。別の部屋ではどうしてこうなったのかとため息をもらす司之介(岡部たかし)とフミ(池脇千鶴)の姿も。日々、できることをやって楽しく暮らしていただけなのに、新聞記事一つで一変してしまう人々の変わりようにそれぞれが戸惑っていた。ついには、ヘブンがトキの背中を見つめながら「ゴメンナサイ……ワタシ……イジン ダカラ」とこぼす。

 生まれる国や場所を選べるわけではないので、異国の地で生まれたヘブンは何も悪くない。間違っているのは、容姿や話す言葉が自分たちとは異なるからという理由で彼を“異人”と呼び、自分たちの都合によって特別視したり、今回のように徹底的に攻撃したりする人たちだ。そんな人たちが、ヘブンが自己否定をしてしまうような言葉を呟いてしまうほど追い詰めている。ヘブンはトキが寝入っていると思い、弱音を吐いたようだがトキはしっかりと聞いていた。虫の声だけが響く暗い部屋で、静かに涙をこらえているようなトキだけを捉えた数秒間は、私たちの胸をさらに締め付けるには十分すぎる時間だった。

 トキたちが不安を抱えたまま迎えた重苦しい朝。それを打ち破るように松野家にやってきたのがサワ(円井わん)だ。髪の毛を振り乱しており、朝から走って橋を越えてきてくれたのだろう。投げ込まれたものが散乱している玄関先を見て、「何かね、これ」とせっせと拾ってくれる。トキはそんなサワをポカンとした表情で見つめていたかと思いきや、火がついたように泣き喚き始めた。その様子は「取り乱す」という言葉がぴったりだった。

 トキは周りが騒がしい時ほど、気丈に振る舞い、「私は大丈夫ですけん」と日々を、淡々を越えて粛々と暮らしていく。トキが自らの出生を薄々知りながら、傳(堤真一)を看病し、最期を看取ったときもそうだった。あのとき、自分の気持ちにどうしても折り合いがつけられなくなったトキは「取り乱してくる」と家の外に出たが、さらに大人になった今は、それさえも言わずに胸の内に思いを溜め込んでいた。でも、あの初めて取り乱したときにそばにいてくれたのがサワだ。どんな自分もさらけ出せる親友・サワが、自分のためにきてくれた。その事実と親友の温かい気持ちがトキの感情の“起爆剤”となって、トキはやっと取り乱すことができたのだろう。

 先週第17週は、サワが庄田の求婚を断った理由を「おトキのせい」と言って泣き、今週18週は結婚しなければ訪れなかったであろうピンチにサワが駆けつけてきてくれたことで安心したトキが「おサワのせい」と言って泣く。2人の中の友情がまた深まった瞬間を見せてもらえたような気持ちになった。

 最近のうさ晴らしをするように楽しくおしゃべりしていたトキとサワのところへなみ(さとうほなみ)も加わって、またかしましくおしゃべりが始まり、トキの心すっかり晴れていく。その後もあれよあれよとトキのために人が集まり、松野家はパーティ状態に。

 勝手に持ち上げては勝手に失望して、攻撃してくる人もいるけれど、そんな人は実際関わりのない人が大多数。暮らしをともにし、日々のいろいろを分かち合ってくれる周りの人たちは、いつも支えてくれる。

「マツエ……スバラシノマチ! スバラシノヒトタチ」

 こうして『ばけばけ』は小さな1日や近くの人の温かさを教えてくれる。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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