『夫に間違いありません』が描く日常の中の不穏さ 松下奈緒と安田顕が演じる“秘密と嘘”

1月5日にスタートした『夫に間違いありません』(カンテレ・フジテレビ系)を観終えたとき、平凡な日常の中に潜む不穏さに、背筋が冷たくなった。
ある日突然、姿を消した夫。1カ月後に発見された水死体から、夫の免許証が所持品として発見される。手にあったほくろの数と位置は夫と一致。「夫に間違いありません」と同一人物であることを認めた。1年後、夫の死を受け入れ、残された家族の面倒をみながら、なんとか立ち直って日々を送る妻の前に、夫が姿を見せる。
開始15分で、私たちはよその家ののっぴきならない状況を目の当たりにしている。朝比聖子(松下奈緒)の身に起きたことは、あまりに突拍子がなさすぎて、どう受け止めていいかわからないというのが、正直な感想だった。しかし物語が進むにつれて、事態は想定外の方向へどんどん進んでいく。
自分の人生を「全部捨てたくなった」と語る一樹(安田顕)の述懐を聞くと、胸が苦しくなる。松下奈緒の演技は、夫の一樹が生きていることを受け入れる聖子の心の動きを丁寧に描いていた。感動の再会はしかし、すぐに現実の問題に取って代わる。
一樹の保険金で、営んでいたおでん屋を改装し、借金を返して、子どもの進学費用に充てようとしていたこと。一樹が生きていたことを届け出れば、受け取った金は返さなくてはならず、ふたたび借金生活へ逆戻りだ。高校受験を控えた栄大(山﨑真斗)の獣医になる夢も諦めなくてならない。
こうして、聖子と一樹は、一樹の死を誰にも言わずに、その存在を隠して生きていくことになった。サスペンスを基調としたドラマで、この段階で、まだいくつか隠されていることがある。発見された遺体は誰のものか。一樹は、生きていた1年の間、どこで何をしていたのか。それらの疑問は第1話後半にかけて語られることになった。
秘密を抱える夫婦と、それを追う人々。生きている人間をめぐる関係と、死んだ人間につながる痕跡。第1話は、その後の展開に向けて、私たちに今作の見取り図を提示する。行方不明者の家族の会で出会った葛原紗春(桜井ユキ)は、初対面の聖子に親しく語りかけて距離を縮める。何のためらいもない自然さが、どこか引っかかる。
国会議員の九条ゆり(余貴美子)の不正を追う週刊誌記者の天童弥生(宮沢氷魚)。シャッターを切ることに遠慮のないカメラマンの薩川景虎(大朏岳優)が、偶然写した聖子の姿。そもそも聖子が講演を引き受けたのも、栄大が志望する進学校の推薦を得やすくするのが動機で、そこにたまたま紗春がいて、弥生たちもいた。
そもそも、夫が失踪して遺体が発見され、帰ってくるまでのシークエンスがやけに短すぎる。この時点で、ただのサスペンスドラマではないことは明らかだ。登場するキャラクターは誰も気付いていないけれど、足元には導火線が張り巡らされていて、何かのきっかけに引火して大惨事になるかもしれない。そういう作為と危険な匂いがそこかしこに漂っているのだ。
その予感を裏付けるかのように、聖子と紗春が接近し、また別のところでは、弥生が一樹とニアミスする事態が発生。真実の扉が開くのは時間の問題と思われたところで、第1話ラストで、聖子が一樹の死を隠していることが瑠美子(白宮みずほ)にバレてしまう展開となった。
名前を変えて勤め始めた工場をすぐクビになってしまう一樹の駄目っぷりや、「金の問題で家族は簡単に壊れる」と言われた聖子の過去から、この夫婦が抱える嘘と秘密は、切羽詰まったものであることがわかる。一方で、初対面の紗春の「うまく隠せばいい」「バレなきゃいい」という言葉は何やら暗示的で、あまり幸せな結末を想像させない。
見つかった遺体が紗春の夫である可能性も示唆された。思わぬ導入で始まった物語が、私たちが生きる現実とつながっているような生々しい感覚に襲われ、早くも第2話が気になる。
川で発見された遺体を、「行方不明になっている男性に間違いない」という親族の証言を受けて引き渡したが、後日その男性が帰宅したことで、“遺体の取り違え”が発覚したという衝撃的な事件に着想を得たサスペンスドラマ。
■放送情報
『夫に間違いありません』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:松下奈緒、桜井ユキ、宮沢氷魚、中村海人、松井玲奈、山﨑真斗、吉本実由、白宮みずほ、大朏岳優、二井景彪、磯村アメリ、前川泰之、朝加真由美、余貴美子、安田顕ほか
脚本:おかざきさとこ
演出:国本雅広、安里麻里、保坂昭一
プロデューサー:近藤匡、柴原祐一
音楽:桶狭間ありさ
主題歌:tuki.「コトノハ」(月面着陸計画)
制作協力:ダブ
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
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