『ばけばけ』ヘブンが明かした結婚生活の過ち リヨの恋の終わりと揺れるトキの胸の内

NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第54話は、ヘブン(トミー・バストウ)が語る過去の結婚生活と、その中で犯してしまった過ちが明かされる回だった。異国の青年の心の奥に封じられていた痛みが姿を現す一方で、トキ(髙石あかり)の胸の中に溜まっていくモヤモヤも、少しずつ輪郭を帯びていく。

ヘブンがマーサ(ミーシャ・ブルックス)との思い出を打ち明けていたその頃、トキはサワ(円井わん)のもとを訪れていた。白湯を飲んで「落ち着いた」と笑ってみせるものの、どこか上の空。サワはそんなトキの様子から、言葉にならないモヤモヤを敏感に察している。そこへ司之介(岡部たかし)が合流し、妙な噂話を持ち込んでくると、状況はさらにややこしくなる。自分に給金が入るならと、サワまでリヨ(北香那)とヘブンの仲を応援する側に回ってしまい、トキの胸のざわめきは一気に加速する。

一方、江藤家ではヘブンの過去が明らかになっていく。新聞社で働き始めたものの、ヘブンの周囲からは徐々に居場所が失われていった。黒人女性であり、しかも混血であるマーサは、差別と偏見の的となる。彼女と共にいた友人も仕事を失い、行き場のない怒りと不安は、やがてマーサ自身を追い詰めていった。ある日、マーサが大家を剃刀で襲ったという知らせが届き、それ以降も似たような騒ぎを何度も起こすようになる。ヘブンにとって帰る場所であるはずの家は、次第に安らぎとは対極の空間になっていった。

ヘブンは、そんな結婚生活の中で自分が犯してしまった過ちについても口を開く。その具体的な内容は多くを語らないが、彼自身が深く悔いていることだけは伝わる告白だった。話を聞いたリヨは「今度はわからないじゃないですか」と、これからの人生に希望を見出そうとする言葉を投げかける。しかしヘブンは、誰とも深く関わらないと固く決意を口にする。自分が再び誰かを傷つけてしまうかもしれないという恐れと、過去から抜け出せない痛み。その場にいたリヨも錦織(吉沢亮)も、ヘブンの過去の重さに言葉を失っていた。
江藤家から戻ったヘブンの表情は、どこか沈んで見えた。ヘブンが手に取ったのは、リヨから贈られたうぐいすの鳥かご。ヘブンは黙って鳥かごを開け、うぐいすを空へ放つ。画面には台詞は一切なく、カラスの鳴き声と呼吸の音だけが響く。その静かな時間の中に、リヨとの関係に自ら区切りをつけようとするヘブンの決意が滲んでいた。その様子を物陰から見ていたトキは、2人の恋が終わったのだと悟ったような表情を浮かべる。トキもリヨから譲り受けた湯たんぽを壊そうとするが、ヘブンに止められる。寒がりなヘブンにとって湯たんぽは、なくしてしまえばただ誰も得をしない生活のぬくもりなのだ。
ヘブンの決意を目の当たりにしたトキのモヤモヤは、単なる恋敵への感情では片付けられない段階に来ている。リヨの想いを知りながらも、ヘブンの過去と向き合う姿に惹かれてしまう自分がいる。その気持ちにどう向き合うのか。トキの選択が、これからの3人の関係を少しずつ変えていきそうだ。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK





















