『あんたが』“勝男”竹内涼真ד鮎美”夏帆が手放したもの 2人の決断に納得のラストに

『あんたが』勝男×鮎美の決断に納得のラスト

 お互いが変化した先に、変化したからこその別れがある。変化できたからこそ、名残惜しくても怖くても手放せるものがある。勝男(竹内涼真)と鮎美(夏帆)がそんなことを身をもって教えてくれた『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)最終話。

 今話もそこかしこに“変化”はちりばめられる。会社を出勤停止になり、上司から今頃落ち込んで何も手につかなくなっているに違いないと心配される勝男が、実は自宅でぶり大根を作っていたり。勝男の頑固親父は妻のご飯のおかわりも渋々引き受け、孫には好きな色のランドセルを選ばせるようになっていたり。就職活動を頑張る鮎美に勝男が手料理を振る舞ったり。全てが鮮やかに逆転し変わっていく。

 もう一度関係をやり直した勝男と鮎美の関係性は居心地が良いところに収まるのかと思いきや、自立したい今の鮎美には、それを一身に支えたいというありがたいはずの勝男からの申し出がどうにも絶妙にフィットしない。

 思えば、勝男は鮎美にフラれたことをきっかけに料理を始め、後輩たちのサポートもあって、自身のかなり偏りがある狭い世界をこじ開けられ拡張してきた。鮎美に自分の手料理を食べてもらいたくて日々腕を磨いてきた。

 一方の鮎美は、誰かに選ばれることと誰かに守られることばかりを優先してしまう自分を脱して、本当の自分だけの“好き”を見つけるために紆余曲折を繰り返す。そもそも目的が全く違った2人の自己変革がうまくフィットし交わったかに見えたし、実際以前の彼らよりも会話の内容もずいぶん変わり、対等でお似合いな関係が築けていたかに見えた。

 事あるごとに「鮎美、困ったことがあったら言って」という勝男からの声かけに「困ってない」と控えめに返す鮎美のコミュニケーションも微笑ましいものかに思えたが、彼女が本当に自分1人で立って進みたい時に、勝男は悪気なく鮎美の声を奪ってしまう。彼女の考えに耳を傾けるのではなく、レクチャーする側に回ろうとしてしまう。

 自分がやりたいことが見え始めた鮎美に、家賃のことや生活全般を支えたいという勝男からの先回りの申し出に彼女自身も一瞬心揺らぐような表情を見せていたが、その生温かく依存性の高い好意が自分たちをダメにしてしまうことを、鮎美ももう十分に学んでいたのだろう。

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