『ばけばけ』“ヘブンさん”の正月回にほっこり “リヨ”北香那の恋心を応援したくなる

今年も残すところ、あと1カ月ほど。NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第51話では、トキ(髙石あかり)たちが一足早く新年を迎えた。ただでさえ大寒波が襲来している最中、ヘブン(トミー・バストウ)がとある発言で祝いの場を凍らせる。リヨ(北香那)のヘブンに対する恋心だけが燃え上がる回だ。
トキとヘブンは、新年の挨拶に訪れた錦織(吉沢亮)にちょっとしたドッキリを仕掛ける。「ヘブン先生が……!」と切迫した様子で錦織に駆け寄るトキ。錦織が慌てて障子を開けると、羽織袴姿のヘブンが三つ指をついて待っていた。あらかじめ、トキと練習していたヘブンの完璧な新年の挨拶に錦織も拍手喝采だ。

最初こそ自由奔放なヘブンに手を焼いていた錦織。ヘブンもまた錦織に対して心を閉ざしていたが、今は心から信頼し合っていることが伝わってくる。錦織からの提案で、これからはヘブンを学校以外では「ヘブンさん」と呼ぶことになった。
ヘブンを受け入れ始めたのは錦織だけではない。この日、花田旅館にはトキたち3人と松野家が招かれ、にぎやかに新年会が催される。そこで、あれだけ異人を敵視していた勘右衛門(小日向文世)がヘブンに対してにこやかに挨拶をする。今やヘブンは松野家の生活を支えてくれているトキの雇用主。ゆえに敬意を払っているのもあるが、タツ(朝加真由美)に恋をして心が満たされているのも大いにあるだろう。

足が痛くて草履は断念したヘブンの「ゾーリ、ソーリー」というギャグは錦織以外には通じなかったが、和やかなムードにほっこりするシーンだった。ちなみにオープニング映像には、草履を履いたヘブンとトキの足が並んだ写真が出てくる。いつかヘブンが妻となったトキと草履で散歩に出かけるようになったら、この回を思い出して感慨深くなりそうだ。
ヘブンと半ば喧嘩別れになっていた平太(生瀬勝久)も「今までのことは水に流して、先生と仲良くなりたいと思うちょる」と和解を申し出る。今回の新年会はヘブンの快気祝いも兼ねていた。不器用な平太なりにヘブンのことを心配していたのだろう。ヘブンを主役として立て、乾杯の音頭取りを任せるが、そこでプチ事件が起きる。ヘブンはその場に立ち上がり、「ショウガツ、タノシ。スバラシ!」とご機嫌に挨拶。そこに「デモ、サムイ」と付け加えて笑いを誘い、掴みはバッチリだった。でも次の瞬間、ヘブンが発した「ツギ、フユ、ワタシ、マツエ、イナイ」という言葉で空気が一変する。まさかそんなにも早くヘブンが松江からいなくなるなんて、誰も思っていなかったのだろう。

しかし、もともとヘブンは一年契約で松江に招聘されていた。本来の目的である日本滞在記の執筆も終盤に差しかかっており、あと一つテーマが決まれば、完成までは一瞬だ。トキも分かってはいたけれど、来年の冬にはヘブンがいないという事実を改めて突きつけられ、ショックを受ける。それは月給20円の貴重な仕事を失ってしまうからではない。風邪で寝込んだヘブンから言われた「私はただの、通りすがりのただの異人です」という言葉が頭から消えないトキ。互いの言語が十分に理解できずとも、それ以外の方法でコミュニケーションを取り続け、ようやく距離が縮まったヘブンがいなくなること。そして、自分との離れ離れになることに何の寂しさも抱いていなさそうなヘブンの態度が寂しいのだ。その感情を恋と呼んでもいいのかはまだわからないが、確実にトキのヘブンに対する気持ちは変わり始めている。

一方、リヨはまだヘブンとの交際を諦めていなかった。新年会でのヘブンの発言を念のため、リヨに伝えたトキ。ショックを受けるかと思いきや、リヨは「そんなの分かっていたことじゃない」とあっさり答える。分かった上で、彼女は松江にヘブンをつなぎとめようとしていた。「松江が寒ければ我が家に暖炉を作ればいいだけのこと」という、「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」のマリー・アントワネットばりにお嬢様らしさ満載の発言にトキは目を丸くする。さすがはおリヨ様、どこまでもブレない。リヨとヘブンが結ばれないことは分かっているが、極寒の状況でも前向きさを失わないその姿勢はついつい応援したくなる。だが、リヨはまだ知らない。ヘブンがアメリカに帰りたい一番の理由は、後生大事にしている写真の中の女性、イライザ(シャーロット・ケイト・フォックス)に会うためだということを。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK





















