『IT/イット ウェルカム・トゥ・デリー』が描く新たな恐怖 ムスキエティ姉弟インタビュー

『ウェルカム・トゥ・デリー』製作陣が語る

「ビル・スカルスガルド抜きでこの物語を語る選択肢はなかった」

ーーこのフランチャイズでは、子どもたちや“ルーザーズ”と呼ばれる仲間たちの存在がとても重要です。キャスティングの際に特に重視した点、求めていた資質などはありますか?

アンディ:まず第一に必要だったのは、“人間らしさ”と“本物の感情”を自然に表現できる力でした。この物語をきちんと伝えるためにも、観客ができるだけ早く感情移入できるようにすることが重要だったんです。シリーズ作品ではエピソード数が多い分、キャラクターと過ごす時間は増えますが、それでも最初の段階で観客を惹きつけ、子どもたちに共感してもらう“瞬発力”が必要でした。今の時代、視聴者は作品を好きかどうかをすぐに判断しますからね。キャスティングで最も大切なのは、やはり子どもたち自身の才能を見抜くこと。新しい俳優たちで構成されるアンサンブルを選ぶのは毎回挑戦です。マージ・トルーマン役のマチルダ・ローラーだけは『ステーション・イレブン』で見たことがありましたが、それ以外の子たちは全員初めてでした。過去の出演作で判断することはできません。実際に会って話をしながら、その人となりを感じ取るしかないんです。

バルバラ:映画版でも今回のドラマ版でも、結果的に選ばれた子どもたちはみんな本当に聡明です。演技経験が少なくても、共通しているのは“自己認識の高さ”と“繊細さ”、そして“共感力”。それこそが彼らを特別な俳優にしていて、お互いのキャラクターを深く理解し合える理由なんです。物語の中で彼らは“仲間のためなら命を懸けられる”ほどの関係性を築いていきます。その絆を育てるには、愛情深く、思いやりがあり、そして驚くほど賢い子どもたちでなければならない。今回のキャストはまさにそうした特別な存在です。

ーー映画版にも出演したビル・スカルスガルドさんはペニーワイズ役を続投されていますが、今作では共同プロデューサーとしても参加されていますね。

アンディ:彼こそが“ペニーワイズ”というキャラクターを創造した張本人です。ですから、彼抜きでこの物語を語るという選択肢は最初からありませんでした。彼は非常に才能ある俳優で、スクリーンに映る姿のほとんどは、彼自身のクリエイティブな解釈によるものです。もちろん私からコンセプト面での意見交換や演出はしますが、このバージョンのペニーワイズを作り上げたのは間違いなくビル本人です。彼は常に挑戦を求めるタイプで、ただの“続編だから”という理由では絶対に出演しません。今回は新たな物語が提示する未知の要素や、このキャラクターの新しい方向性に魅力を感じてくれたのだと思います。撮影現場では本当に刺激的で、彼の“予測不能さ”が重要なんです。テイクを重ねるたびに違うアプローチを見せてくれて、そのたびに新鮮でワクワクさせられます。

ーーアンディさんは製作総指揮に加え、監督としても複数エピソードを手がけられています。シリーズ全体のトーンやビジョンを統一するために、どのような点を意識されたのでしょうか?

バルバラ:答えはシンプルで、すべてです(笑)。

アンディ:まず、トーンやスタイルを決めるために、パイロット(第1話)を自分で監督しました。でもシーズンの脚本作業を通じて、パイロット以上のことをやりたいと思うようになりました。正直に言えば、「2話目を他の監督に任せたくない」というわがままな気持ちもありました。最終話のドラフトが上がってきたとき、「これは自分で監督するしかない」と思いました。本当に素晴らしい内容で、どうしても関わりたいと。そしてこう考えたんです。「もし最終話を自分が監督するなら、その前の話も他の誰にも任せられない」。だから結局、最初の2話と最後の2話、計4話を自分で監督することにしました。この作業は長期にわたり、まるで映画2本を連続で撮るような感覚で、本当に大変でした。

バルバラ:『ウェルカム・トゥ・デリー』は、いわば私たちの“子ども”のような作品なんです。毎日現場にいましたし、本作のストーリーやペニーワイズという存在を誰よりも理解しています。何をすべきで、何をしてはいけないのか。観客が何を求めているのか。それらを全部わかっているつもりです。

アンディ:もちろん、第3話と第4話を担当してくれた監督陣も素晴らしかった。

バルバラ:アンドリュー・バーンスタイン、エマニュエル・オセイ=クフォー、ジェイミー・トラヴィス――いずれも本当に優秀な監督たちです。ホラーというジャンルでは、テレビシリーズでも監督の役割が特に重要になります。なぜなら“恐怖”という感情を脚本から映像へと正確に落とし込むには、構成、間、演出のすべてが緻密でなければならないからです。そこを理解してくれていた彼らの存在は、とても大きかったです。

■配信情報
『IT/イット ウェルカム・トゥ・デリー "それ"が見えたら、終わり。』
U-NEXTにて独占配信中
出演:テイラー・ペイジ、ジョヴァン・アデポ、ビル・スカルスガルド、クリス・チョーク、ジェームズ・レマー、スティーヴン・ライダー、マデリーン・ストウ、ルディ・マンクーソ
日本語吹替キャスト:下野紘、多田野曜平、星野貴紀、白石涼子、田村真、中根徹、神尾晋一郎、藤井雄太
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