アニメ市場規模が最高値を更新 『鬼滅の刃』の“ドメスティック”さは未到の領域へ

そして音楽については、劇伴を担当する梶浦由記の存在を欠くことができない。梶浦由記は『魔法少女まどか☆マギカ』を筆頭に、先に挙げた『Fate』シリーズ、『ソードアート・オンライン』などの劇伴を数多く担当しており、作品世界を彩る独特の曲調は2010年代以降のシーンを語るうえで避けることはできない。また梶浦由記は上記の作品の主題歌やボーカルユニット・Kalafinaのプロデュースを手がけており、このことが『鬼滅の刃』の劇伴(椎名豪と共同)と主題歌の作曲に通じていると考えてよいだろう(余談だが、筆者はもしKalafinaが解散していなければ、そして梶浦由記と再び歩む未来があったならば、『鬼滅の刃』でも主題歌を担当していただろうと考えている)。
『鬼滅の刃』のドメスティックでグローバルな力

こうして『鬼滅の刃』を形成するさまざまな要素を見てみれば、本作がいかに2010年代に頭角を現し、またカルチャーの中心を担ってきたクリエイターたちが結集して制作されたものであるかが明確になる。そう考えてみると、『鬼滅の刃』が抱える二面性が見えてきはしないか。確かに本作は結果的に見れば現時点ではグローバルに最も人気を得た作品のひとつである。しかしその内実がむしろ、きわめてドメスティックな国内文化の集合であるという事実は指摘される必要がある。『鬼滅の刃』はしばしば海外での展開の拡大が語られることがあるが、その根底にはここまでにみてきたような連綿と紡がれてきた文化的素地が見え隠れしている。それは決して、だからこそ国内ファンの意向を重視するべきということではない。そうではなく、作品の制作されてきた背景や過程、そしてそれらの系譜を辿ることによってはじめて見えてくるものがあり、それらを正確に把握することによって作品に新たな視点がもたらされるのではないかという一つの問いのなげかけなのである。
「柱稽古編」第8話において産屋敷耀哉は無惨に対し、「人の思いこそが、永遠であり、不滅なんだよ」と語りかける。鬼殺隊がなくならなかったのはその証明なのだ、と。ここで浮かび上がる「継承」のモチーフは、『鬼滅の刃』という作品自体にも通じているようにも思える。その意味で本作は、先行世代から受け継がれてきた種々の文化の所産が織り込まれ、内向きに成熟したがゆえに、外へと開かれていった作品と言えるのかもしれない。
参照
※1. https://aja.gr.jp/info/2579(以下、特に断りがない限り市場規模に関する数値は同レポートによる)
※2. https://www.oricon.co.jp/news/2416412/full/
■公開情報
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』
全国公開中
キャスト:花江夏樹(竈門炭治郎役)、鬼頭明里(竈門禰󠄀豆子役)、下野紘(我妻善逸役)、松岡禎丞(嘴平伊之助役)、上田麗奈(栗花落カナヲ役)、岡本信彦(不死川玄弥役)、櫻井孝宏(冨岡義勇役)、小西克幸(宇髄天元役)、河西健吾(時透無一郎役)、早見沙織(胡蝶しのぶ役)、花澤香菜(甘露寺蜜璃役)、鈴村健一(伊黒小芭内役)、関智一(不死川実弥役)、杉田智和(悲鳴嶼行冥役)、石田彰(猗窩座役)
原作:吾峠呼世晴(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島晃
脚本制作:ufotable
サブキャラクターデザイン:佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花
プロップデザイン:小山将治
美術監督:矢中勝、樺澤侑里
美術監修:衛藤功二
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:大前祐子
編集:神野学
音楽:梶浦由記、椎名豪
主題歌:Aimer「太陽が昇らない世界」(SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.)・LiSA「残酷な夜に輝け」 (SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.)
総監督:近藤光
アニメーション制作:ufotable
配給:東宝・アニプレックス
©︎吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
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公式サイト:https://kimetsu.com/anime/mugenjyohen_movie/
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