興収で読む北米映画トレンド
『チェンソーマン レゼ篇』予想を大幅に上回る成績で北米No.1 『鬼滅の刃』に次ぐ快挙に

『鬼滅の刃』に続き、今度は『チェンソーマン』がハリウッドを制した。
10月24日~26日の北米映画週末ランキングは、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が初登場No.1を獲得。北米3003館で週末興行収入1725万ドルと、予想を大幅に上回るオープニング成績を記録した。話題作を含む複数の新作映画が劇場公開を迎えるなか、日本製アニメへの熱い視線を改めて感じさせる結果だ。
本作は藤本タツキによる同名コミックの人気エピソードを、2022年製作のテレビアニメ版の続編としてアニメーション映画化したもの。日本のアニメ映画としては、9月に北米公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(以下『「鬼滅の刃」無限城編』)の初登場No.1(初動興収7061万ドル)に続く快挙となった。

北米配給は『「鬼滅の刃」無限城編』と同じく、ソニー・ピクチャーズ傘下のクランチロール。海外最大のアニメーション配信サービス「Crunchyroll」を保有し、日本のアニメ映画を多数公開してきたノウハウが今回も活きた結果だ。
公開館数は3003館なので、『「鬼滅の刃」無限城編』の3315館とほぼ同等。やはりハリウッドのスタジオ映画と変わらないスケールで勝負を仕掛けたクランチロールは、プラットフォーム上でテレビ版の総集編を配信したほか、各所でテレビシリーズの視聴を促し、サイトのみならず動画・ポッドキャストでも映画版の広告を展開した。
また、あらかじめ存在するファンベースに対してはアニメ・エキスポやニューヨーク・コミコンでのブース展開やパネルイベントなどで需要に応えつつ話題を生み出し、アニメ系インフルエンサーとタッグを組んだ上映会も開催。映画館では『「鬼滅の刃」無限城編』や『ワン・バトル・アフター・アナザー』『トロン:アレス』などで予告編を上映していた。

今回の初登場No.1はこうした戦略が功を奏したとみられるが、やはり注目すべきは『「鬼滅の刃」無限城編』と同じく、少し前のスーパーヒーロー映画とよく似た興行傾向を示していることだ。観客の男女比は男性75%・女性25%で、年代別では全体の半分以上が25歳未満。『「鬼滅の刃」無限城編』は公開2週目に大幅に落ち込んだが、『チェンソーマン レゼ篇』はどうか。
期待すべきは口コミ効果で、Rotten Tomatoesでは批評家スコア96%、観客スコア99%という高評価を獲得。映画館の出口調査に基づくCinemaScoreでは「A」評価となった。日本では公開から38日間で興行収入71億円を突破したが、アメリカでの推移にも注目したい。

前週初登場の『ブラックフォン 2』は劇場版『チェンソーマン レゼ篇』にNo.1の座を奪われたが、週末3日間で1300万ドル、前週比マイナス52.4%とかなり好調。第3位に初登場した恋愛映画『Regretting You(原題)』を接戦で破り、第2位に落ち着く見込みだ(これは速報値のデータによるもので、最終的な結果は追って発表される)。
北米興収は4905万ドル、世界興収は8042万ドル。製作費3000万ドルの回収はほぼ確実で、ユニバーサル&ブラムハウスにとっては喜ばしい結果と言えそうだ。日本公開は11月21日。




















