さとうほなみ、遊女役で“色気”たっぷり 朝ドラ『ばけばけ』でお茶の間を照らす存在に

さとうほなみ、遊女役で“色気”たっぷり

 ヒロインのトキ(髙石あかり)がのちに夫となるヘブン(トミー・バストウ)とついに運命の出会いを果たし、物語が大きく動き出したNHK連続テレビ小説『ばけばけ』。2人に接点を作り、恋のキューピッドとなったのが、さとうほなみ演じる遊女・なみだ。

 なみの初登場は第3話。幼い頃のトキ(福地美晴)が目撃した、城下町から川を隔てた貧しい人たちが住む「天国町」に泣き叫びながら連れ去られていった女性がなみだった。その後、父・司之介(岡部たかし)が事業に失敗し、天国町にある遊郭と隣り合わせの長屋に引っ越したトキはなみと知り合うことになる。

 ほな・いこか名義でバンド「ゲスの極み乙女」と「マイクロコズム」のドラムスを担当しており、ミュージシャンと俳優の二足のわらじで活躍しているさとう。俳優としては2017年のドラマ『黒革の手帖』(テレビ朝日系)から本格的に活動をスタートさせ、朝ドラには2018年度後期放送の『まんぷく』に続く2度目の出演となる。『まんぷく』で演じたのは、ヒロイン・福子の姉である克子(松下奈緒)の夫で、画家の忠彦(要潤)が美人画に転向した際に雇ったモデルの花村奈保美。忠彦と連日アトリエで2人きりになり、克子をやきもきさせる役どころだ。

 以降もさとうは、同性から見て「パートナーの近くにいてほしくない女性」を数多く演じてきた。特に人々の記憶に深く刻まれているのは『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系/以下、『あなして』)の結衣花だろう。主人公のみち(奈緒)とセックスレス状態にある夫・陽一(永山瑛太)が営む喫茶店でアルバイトとして働きはじめ、夫婦の仲をかき乱す結衣花。その最大の特徴はあからさまな“いやらしさ”がないことだ。一見するとサッパリした性格で無害に思えるが、ほのかに溢れ出る独特の色気があり、女性の心をざわつかせる。

 一方で、結衣花は過去にも他の男性と不倫を経験しており、好きな人の本命になれない宿命を背負っていた。『あなして』の流れを汲む『わたしの宝物』(フジテレビ系)で演じた莉紗も好意を寄せる冬月(深澤辰哉)の心を手に入れたい一心で暴走するが、最終的に片思いに終わる。さとうはどの役も単なる悪女では終わらせず、どこか悲しみを背負った演技で観る人に憎みきれない印象を残してきた。

 『ばけばけ』にはヒロイン役でオーディションを受けたが、後日なみ役でオファーを受けたという。農家の家に8人兄弟の長女として生まれ、借金を背負った家族を養うために天国遊郭の遊女となったなみ。同じく貧しい家に生まれ、家族のために働くトキやサワ(円井わん)とはともに地獄脱出を目指す仲間。だが、武家の生まれである2人は遊女にはなりたくないと思っており、その意味で下に見られていることもなみは分かっているのではないだろうか。それでもトキが銀二郎(寛一郎)との結婚が決まった際にはみんなと一緒に祝福し、2人が仲睦まじくしていれば、「その様子なら、 当分こっちにはこなさそうだねぇ」とさらり言ってのける懐の大きな女性だ。さとうはユーモアを交えながら、つらい境遇を一切匂わせないほどの明るさでなみを演じており、いつもお茶の間をパッと照らしてくれる。

 そんななみの印象が少し変化したのは第27話。花田旅館を出て、一人暮らしをすることになったヘブンの女中に立候補したなみがトキと梶谷(岩崎う大)にその心情を吐露するシーンだ。当時、外国人を相手にしていた遊女やその妾となった女性は羅紗緬(らしゃめん)と呼ばれ、差別の対象だった。彼女たちの悲惨な末路を聞かされていたなみは湧き上がる恐怖心と戦いながら、「だとも私はええかげん、ここを出たいって思うちょる」と決意を語る。どっちを選んでも地獄は地獄。だったら、自分がよりましだと思える地獄をなみは選んだのだ。トキたちに精一杯の強がりで見せた笑顔に気高さと弱さが同居していて、幸せになってほしいと願わずにはいられなかった。

 その後、なみはヘブンと面談して無事に好感触を得るが、なぜかトキが女中候補にあがる。これまでは付かず離れずの距離感で互いを鼓舞し合ってきた2人だが、この出来事をきっかけに無意識の友情にヒビが入りそうで心配だ。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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