『じゃあ、あんたが作ってみろよ』になぜ誰もが夢中なのか “今”必要な“過去”からの解放

本作が最初に描いたのは亭主関白思考な海老原勝男の物語だ。タイトルの語気の強さからして、「料理は女が作って当たり前!」と思っている、気づけば時代に取り残されていた「化石男」こと勝男を正していくドラマかと思いきや、本作はむしろ勝男という未婚男性が抱える孤独に寄り添い、彼の人格を形成するに至った原因の1つなのだろう父親・勝(菅原大吉)の教えなど、彼がそうなった背景を丁寧に紐解いていく。

そして、後輩の白崎と南川(杏花)、「女友達」となった椿と関わることを通して彼は劇的に変わっていく。自分で料理をして、作ったものを共有する喜び。「人に話すと楽になることもある」ことを知り、さらには「朝、女友達と納豆トーストを食べる」喜びを知る。最初こそ戸惑っていたものの、気づけば嬉々として自分自身の変化を受け入れている彼の毎日は、本当に楽しそうで、彼自身がそれまで縛られてきた「男だからこうしなければ」という呪いから解放されつつあることがわかる。

一方、勝男と同じくこれまでの自分を捨て、未知の世界に足を踏み入れ、解き放たれる喜びを味わいつつある山岸鮎美は、その先で生じた孤独を埋めるようにミナトくん(青木柚)に恋をした。しかし、「コークハイともつ焼き」の美味しさを受け入れつつ、自身が「ビール派」であるという信念は曲げない勝男と違い、鮎美の、髪色含め、あまりにも簡単に目の前にあるものに染まり過ぎてしまう性格に危うさを感じずにはいられないのは私だけではないだろう。彼女の見つめる「キラキラ」な新しい世界の先には、一体何が待ち受けているのだろうか。彼女にとって、自分自身の本当の「好き」を見つける旅は、まだ始まったばかりである。
谷口菜津子による同名漫画を原作としたロマンスコメディ。「料理を作る」というきっかけを通じて、“当たり前”と思っていたものを見つめ直していく男女を描く。
■放送情報
火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:夏帆、竹内涼真、中条あやみ、青木柚、前原瑞樹、サーヤ(ラランド)、楽駆、杏花
原作:谷口菜津子『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(ぶんか社『comicタント』連載)
脚本:安藤奎
演出:伊東祥宏、福田亮介、尾本克宏
プロデューサー:杉田彩佳、丸山いづみ
編成:関川友理
音楽:金子隆博
主題歌:This is LAST「シェイプシフター」(SDR)
制作:TBSスパークル、TBS
©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/antaga_tbs/
公式X(旧Twitter):@antaga_tbs
公式 Instagram:antaga_tbs
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