『良いこと悪いこと』ハイペースな展開に考察加速 被害者と加害者の関係性の描き方が肝に

『良いこと悪いこと』被害者と加害者の関係性

 同窓会で22年ぶりに掘り起こされたタイムカプセルに入っていた卒業アルバム。そこで顔が塗りつぶされていた6名のうち、ひとりが転落死し、もうひとりは火災に巻き込まれて意識不明の重体。初回からかなりのハイペースで事が運んでいる『良いこと悪いこと』(日本テレビ系)。10月18日に放送された第2話では、高木(間宮祥太朗)と園子(新木優子)が、同窓会に参加していなかった笑美(松井玲奈)と再会。この笑美も、かつて高木と一緒に園子をいじめていたグループのひとりであり、顔を塗りつぶされているのである。

 タイムカプセルに入れていた「みんなの夢」でアイドルになる絵を描いていた笑美。しかし20代の頃にはモデルとして活動していたらしいが芽が出ず、現在は六本木のクラブでホステスをしているという。彼女に会いに行き、一連の事件のことを話す高木だったが、真面目に取り合ってはもらえない。その頃、園子は同僚が追っている違法薬物事件に笑美の恋人が関与していることを知ってしまう。そんななか、高木のもとにはアメリカに渡ってアプリ開発会社のCEOをしている小山(森本慎太郎)が現れるのである。

 冒頭から回想シーンで描かれた、小学校時代の園子と笑美の関係。ランドセルにつけたマスコットがきっかけで変化してしまう微妙なヒエラルキー構造と、介入していくクラスのリーダー格であった高木。そこから園子に対するいじめが本格化していったことが示されている(おそらく前回描かれた体育倉庫の件も、その流れがあってのことだろう)。22年が経ち、当時の被害者である園子と加害者である高木が利害の一致から手を組んでいるわけだが、こうした被害者/加害者の関係性の描き方は、やはりこのドラマの肝の部分であろう。

 当然のように20年以上経っても当時のことを鮮明に覚え、許す気がない園子と、「20年経っても消えないことしちゃったんだよ」と語るように、自責と悔悟を少なからず抱えたまま園子と向き合っている高木。そこへ今回現れた笑美は、いじめをしていたこと自体は覚えており、形式上は園子に謝罪の言葉を伝えるが、その後「正直よく覚えてない」と話す。それでも彼女は、現在の園子の姿を羨ましそうに見つめ、何者にもなれなかった自分自身の過去を後悔しているようなそぶりを見せる。

 考えてみれば、クラスメイト全員が描いた「みんなの夢」。園子が自分自身のまわりを真っ黒で塗りつぶす絵を描いていたことは一旦置いておくとしても、土屋(剛力彩芽)や豊川(稲葉友)らクラスメイトは、満足しているかはともかくその夢を叶えているのに対し、高木たち6名はまったく違う道を進んでいる。あたかも当時の行いに対して、なりたい者になれないという罰が与えられているかのように。いずれにせよ、「やった方もやられた方もなかったことにはできない。それを背負ってこの歳まで生きてきてる」という東雲(深川麻衣)の言葉に、子どもの頃に些細なことのつもりでやった“悪いこと”の罪深さが集約されているといえよう。

 前回のラストで高木が描いた絵がヒーローであったことが明らかになったが、一連の事件はいずれもその絵の内容に見立てたもの。今回の笑美の場合、アイドルとして立つ彼女を照らすスポットライトと同じ黄色の傘の下でトラックに跳ねられている。小山が当時を思い出すように口ずさんだ「森のくまさん」の替え歌に名前が出てくる順で狙われているとすれば、次は宇宙飛行士になる夢を描いた小山の番。当人は「宇宙で殺されるのか」と言っていたが、前回の登場シーンでは何やらプラネタリウムで仕事をしていた。おそらくその場所で狙われるということなのだろうか。

『良いこと悪いこと』の画像

良いこと悪いこと

ガクカワサキが脚本を手がけるノンストップ考察ミステリー。小学校の同窓会で、連続不審死が発生。同級生全員が容疑者となる中、犯人を巡る探り合いが始まる。

■放送情報
『良いこと悪いこと』
日本テレビ系にて、毎週土曜21:00~放送
出演:間宮祥太朗、新木優子、森本慎太郎(SixTONES)、深川麻衣、戸塚純貴、剛力彩芽、木村昴、藤間爽子、工藤阿須加、松井玲奈、稲葉友、森優作、水川かたまり(空気階段)ほか
脚本:ガクカワサキ
演出:狩山俊輔、滝本憲吾、長野晋也
プロデューサー:鈴木将大、妙円園洋輝
チーフプロデューサー:道坂忠久
音楽:Jun Futamata
制作協力:ダブ
©日本テレビ
公式X(旧Twitter):@iiwaru_ntv
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公式サイト:https://www.ntv.co.jp/iiwaru/

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