“ひめゆり学徒隊”から着想を得た『cocoon』 伊藤万理華&満島ひかりが導く“戦争の記憶”

私たちはこの夏、80回目の終戦記念日を迎えた。
1945年の8月15日に日本が太平洋戦争の終結を迎えてから、早くも80年の時が経った。いや、まだ80年しか経っていないというべきだろうか。「早くも」なのか「まだ」なのか、どちらで表現するのが適切なのか判断しかねるのがこのご時世である。80年の間に戦争を知らない世代が増え、いまの時代を「戦後」と捉えるべきなのか、新しい「戦前」と捉えるべきなのか、議論が分かれてしまうような状況に私たちはあるだろう。だから、考えなければならない。あの戦争について。あるいはあの戦争と、私たちの関係や距離感について。
手がかりはいくらでもある。私たちが考えを深めていくその入口は、どこにだって存在する。エンターテインメント性の強いコンテンツにだって開かれている。戦争を知らない平成生まれの筆者がここで提示したいのは、8月25日に放送されるアニメ『cocoon 〜ある夏の少女たちより〜』(NHK総合)である。

本作は、漫画家・今日マチ子の代表作『cocoon』をアニメ化したもので、“ひめゆり学徒隊”の存在から着想を得た作品だ。2010年に刊行された傑作が60分の名作となって、私たちの前に現れることとなるのである。
“ひめゆり学徒隊”とは、太平洋戦争末期の日本で唯一の地上戦が繰り広げられた沖縄において、看護要員としてその最前線に動員されることとなった少女たちのこと。“悲劇”に見舞われた少女たちの存在は、これまでにもさまざまな作品の中で描かれてきた。
しかし今日マチ子が描いた少女たちの姿は、“悲劇”の一言で語れるものではない。もちろんそこには想像を絶する悲劇があるのだけれど、『cocoon』は悲劇を訴えるだけのものではない。私たち一人ひとりに物語(=人生)があるように、主人公・サンを中心とした少女たちの物語を描いている。実際にあったかもしれない、少女たちの物語を。
このアニメ化以前に、『cocoon』は「マームとジプシー」という演劇団体によって舞台化されている。2013年に初演を迎え、戦後70年の年である2015年に再演を、そして2022年には再々演が実現し、つい先日まで渋谷のユーロスペースにて2022年版の記録映像が上映されていた。漫画というメディアに収められた少女たちの物語は、舞台上で俳優たちの肉体と声を借り、化学反応を起こし、長く愛されるものとなったのだ。そして今回のアニメ化により、『cocoon』はさらに遠くまで広がっていくこととなる。




















