日本のアニメに根付く“オマージュ” 『ダンダダン』騒動を機に再考する境界線の在り方

『ダンダダン』“オマージュ”の在り方を再考

 2025年夏、アニメ『ダンダダン』第18話に登場した架空のヴィジュアル系バンド「HAYASii」の劇中歌「Hunting Soul」が、日本のロックバンドX JAPANの代表曲「紅」を強く想起させるとして、SNSを中心に大きな騒動を巻き起こしている。

 これは単なる一作品の演出に留まらず、日本のアニメやサブカルチャーに長く根づいてきた「オマージュ」や「パロディ」といった創作文化、そしてデジタル時代の知的財産のあり方そのものを問うものだった。

 騒動の中心にいたのはX JAPANのリーダー、YOSHIKIだ。当初はSNSで「X JAPANに聴こえない?」と軽妙に反応し、むしろ面白がっているような様子を見せていた。だが弁護士やスタッフの指摘を受け、著作権侵害の可能性に言及せざるを得なくなると、事態は個人的なリスペクトの枠を超え、一気にビジネス上の問題へと変化していった。「事前に一言あれば」と語るYOSHIKIは、法的な是非以前に、作り手同士の信頼関係や敬意が欠落していたことが、最も大きな失望だったのだろう。

TVアニメ『ダンダダン』HAYASii「Hunting Soul」【lyric video】

 最終的に劇中歌「Hunting Soul」はサブスクリプション配信を停止する事態に発展した。法的に違法と断定されたわけではないにせよ、SNSでの世論や関係者間の不信感が商業的な判断に直結し、作品表現が差し止められる現実を浮かび上がらせた。これは、日本のアニメやサブカルチャーが長らく支えられてきた“暗黙の了解”が、SNSの即時性やグローバルなビジネス慣習の前ではもはや成立しにくいことを示す象徴的な事件だったと言える。

 そもそもオマージュ、パロディ、盗作の境界線は曖昧なところがある。オマージュは敬意を込めた参照であり、文化的対話を生む行為だ。一方パロディは風刺やユーモアを前提とし、元の作品の存在を意識させることで成立する。そして盗作は無断複製を自己のオリジナルとして発表する不当利用であり、法的リスクは極めて高い。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる