黒沢ともよ×石上静香、共演を重ねてぶつけ合った想い 「やっと彼女が一人の人間になった」

黒沢ともよ×石上静香がぶつけ合った想い

 7月より放送中のTVアニメ『アークナイツ【焔燼曙明/RISE FROM EMBER】』。アプリゲーム『アークナイツ - 明日方舟 -』を原作とするアニメシリーズの第3期にあたる本作では、世界各地で発生した鉱石病(オリパシー)により現れた特異体質者たちをめぐり、国家やテロリスト、企業が紛争に巻き込まれるなかで生まれたドラマが描かれる。

 本作で黒沢ともよと石上静香は、それぞれ鉱石病(オリパシー)感染者によるテロリスト集団レユニオン・ムーブメントと戦うアーミヤとチェンを演じている。第3期ではいよいよレユニオンの幹部やボスとの戦闘が待ち受ける。

 TVアニメ『アークナイツ』シリーズの節目となる展開にあたり、2人はどのように役作りに挑んだのか。第1期からの思いを、ディレクションの裏話も交えながら明かした。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

アーミヤの覚悟を描く第3期

——第3期の大きな見せ場としてパトリオットとの戦いがありました。黒沢さんはアーミヤの思いをどのように演じていましたか?

黒沢ともよ(以下、黒沢):パトリオットは作中で何度も言われているように、その名前を聞いただけでおののいてしまうくらい強い人物なので、そこに立ち向かっていく気持ちを演じられるよう心掛けていました。しかもアーミヤは他人と心が通ってしまうとその思いが全部見えてしまうような人なので、パトリオットのように悪人ではない、過激な思想すら持っていなくて否定するところが何もない人物を倒さないといけないということを自覚してその場にいるというのは、アーミヤにとっては新たなことだと思っていました。それまでは「自分たちが感染者たちの未来のために正しいことをしている」という正義感のもと戦ってきたのに、「自分のしていることは正義なのかな」と自問自答しながらの戦いになったので、その揺らぎをセンシティブに演じられたらいいなと思っていました。

(左から)石上静香、黒沢ともよ

——第3期ではアーミヤの“覚悟”が伝わるシーンが多かったです。

黒沢:それと黒沢ともよ個人としては、パトリオット役の銀河万丈さんとはアニメーションデビュー作で共演していて、その万丈さんの圧倒的凄さが12歳の私の心に焼き付いていたので……。彼に10年以上の時を経てまた対峙することの重みもすごく感じていました。「その重みに負けないぞ……!」「2本の足で立つぞ……!」といった気持ちで、「緊張しないように頑張る」ような思いがアーミヤとも重なったのかなと。自分の過去にも助けてもらいながら演じました。

石上静香(以下、石上):第1期の頃のアーミヤは、ロドスのリーダーではありますけど、まだ“一人の少女”という感じが強くて。ミーシャのエピソードもそうですがどうしても立場の異なる人にも同情したり、決断を迫られる場面でも“ロドスのリーダー”というよりは“アーミヤ個人”の気持ちを優先してしまうシーンがあったと思います。それはきっとチェンにとっても、昔の自分とも重なるところがあったと思うので、私がチェンを演じた限りでは第1期のアーミヤはなんとなく妹のような存在として見ていました。でもいろいろな戦場でレユニオンや龍門の情勢を目の当たりにして、その上で第3期ではロドス鑑内でメンバーを奮い立たせる演説をするんですけど、チェンが成し得なかった理想を自分よりも年下の女の子がリーダーとして全うしているのを見て、演者個人としても、チェンはその場にはいませんでしたがあれを聞いていたらきっと心を打たれるだろうなと思っていました。

——第19話で、チェルノボーグ中枢区画への侵攻を決断するシーンですね。

黒沢:あのシーンはアーミヤのそれまでの成長がはっきり描かれる場面だったので、声色のテンション感を何度も協議してこだわって収録させていただきました。結果的に“ちゃんと頑張れてるアーミヤ”が採用されたんだなと思っているのですが……まだ苦しさが残るアーミヤだったり、悲しさをこぼしちゃうアーミヤだったり、必死なアーミヤ……いろいろなパターンを演じさせていただきました。

石上:そんな裏話が……! そのシーン、収録は一緒じゃなかったんだよね。

黒沢:そうなんです。「もうちょっと頑張れない感じでいこう」とか「もうちょっと必死さが滲んじゃってる感じでいこう」「重たい話をするように話そう」とかいろいろなディレクションがあったんですが、結果的にちゃんと“踏ん張れている”アーミヤが採用されていると思います。

黒沢ともよ

——アーミヤとチェンの掛け合いの中で、特に思い入れのあるシーンはありますか?

黒沢:やっぱり第1期でレユニオン基地に行ったときにチェンさんを振り切っていくところは、2人の関係にとって大きな出来事だったと思います。第2期と第3期になると、ある意味チェンさんの物語というか、彼女の人生にアーミヤが寄り添っていくようなところも多くなっていくので……。

石上:たしかに、 真正面からお互いの思いをぶつけあったのは第1期のほうが多かったですね。第3期の後半でもそういう場面はあるんですけど、それ以外ではやっぱり第1期のスカルシュレッダーとミーシャのエピソードで、チェンが自分では成し得なかった期待をアーミヤに託している関係がすごく印象に残っています。

—— 石上さんもそういったチェンの演技をするなかで、黒沢さんのように繊細なディレクションがあったり、試行錯誤したことはありますか?

石上: 第3期に関しては意外とすんなりと言いますか、自分の用意したチェンさんがストレートに採用されることが多くてうれしかったです。チェンさんはある意味性格がわかりやすいので、台本を頂いた印象のまま演じたら渡辺監督とも意見が合っているかたちになりました。どちらかというと第1期の序盤のほうが演技に意識的に変化を加えたところがあって……。ゲーム版で初めて演じたチェンはすでにロドスに加入した後でしたが、アニメ版で初めてアーミヤやドクターたちと出会うのは龍門の立場にいるチェンだったので、ゲーム版とアニメ版とで演技を変えています。アニメ版ではゲーム版よりもずっとつんけんしていて、声も低くていいというディレクションを頂いていました。

——それはおもしろいですね。アーミヤもアニメではゲーム版に比べるとちょっと“ブラック上司”感が薄れてる気がしますが……。

黒沢:あー、たしかに(笑) 。

——黒沢さんも何かゲーム版とアニメ版とで演技を変えたところはあるのでしょうか?

黒沢:ゲームでは手がかりがまったくない状態で、開発の皆さんの言葉を頼りにパーツをお渡ししていた感覚でした。“靴を作っている”ような……。彼女の断片的な表情しか知らなかったので、アニメになって今に至るまでの文脈から関わってきて、やっと彼女が一人の人間になったと思っています。第3期で言えば、パトリオットのシーンで感情的にならなかったのは偉かったなと、成長を感じました。“自分のことでいっぱいいっぱいになる少女”のようなキャラはロスモンティスが担うようになったので、アーミヤは先輩のような雰囲気も出てきたと思います。

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